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電気代高騰に揺れるデータセンタービジネス、事業者の対応は? “中の人”に聞く現状と対策(2/3 ページ)

» 2022年08月25日 10時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

「値上げ」と「省電力化」 事業者が取り組む対策

 事態を受け、NTTコムでは大きく分けて2種類の対策を進めている。1つ目は単純な値上げだ。

 「契約更新のタイミングなどを見計らいながら、実際に掛かっている料金を請求している。ウクライナ情勢もあり、総論としてはクライアントに理解してもらっている状況。ただ、企業によっては事業計画の中でこれだけ電気代が上がることを想定していないところもあり『分かるけど、そんなの払えるか』といった反応が今後出てくるかなと考えている」(松林さん)

「気化熱で」「AIで」 サーバを冷やす取り組みの数々

 もう一つは省電力化だ。データセンターの省電力化は、基本的にサーバを冷やす仕組みの効率化が目標になる。データセンターはもともと大量の電気を使う前提の事業ということあり、NTTコムも昨今の電力価格高騰に先立って対策を進めていた。その積み重ねが、省電力化に役立っているという。

 例えばNTTコムが保有する一部のデータセンターでは、サーバの配置を見直したり、ラックに専用のパーツをつけたりすることで排気(温風)と冷風が混ざらないようにし、空調の効果を高める「エアフローマネジメント」という仕組みを採用している。同社の内田匡紀さん(Nexcenter Lab Global Account Manager)によれば、エアフローマネジメントを採用しない場合に比べ、送風機を動かす電力を2割ほど減らせるという。

 AIを活用して冷却を効率化するシステムも一部のデータセンターに導入している。ラックに取り付けた温度センサーで集めたデータを学習させたAIに、ラックごとの最適な温度を判断させ、自動で空調を管理する仕組みだ。導入前に比べ、空調に掛かる電力を3割ほど削減できているという。

 冷却に水を活用する取り組みもある。NTTコムは2020年、気化熱を利用した冷却方式「間接蒸発冷却式空調」の運用を、同年にオープンしたデータセンターで始めた。

photo NTTコムの内田匡紀さん

 これは(1)外気を使って冷却する、(2)冷房と気化熱を併用して冷却する、(3)それぞれを併用する──の3モードを季節ごとに使い分けることで、効率的に冷却する仕組みだ。外気が冷たい冬は(1)を、そうでない夏は(2)を、秋や春は(3)を使う。こちらも、空調に掛かる電力の削減につながっているという。

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