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フランスで増える“脱税プール” 国税局が導入した「マルサAI」活躍の裏側ウィズコロナ時代のテクノロジー(1/2 ページ)

» 2022年09月05日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 いわゆる「第7波」の終息が見えてきたものの、いまだにCOVID-19のパンデミックから完全に抜け切れたとはいえない日本。経済への悪影響もさまざまな形で現れているが、意外なことに、日本の一般会計の税収は2年連続で過去最高を記録している。

 理由については、政府のコロナ対策による支出の効果や、コロナ禍で逆に売り上げを伸ばした企業の存在、フリーランスや副業など新たな働き方の普及とさまざまな要因が挙げられている。いずれにせよ、パンデミックのように異常な状況下においては、さまざまな想定外の出来事が起きることを示しているといえよう。

 実は日本だけでなく、フランスでも同様の事態が起きている。フランスでは、パンデミックの影響で意外な形の税収入が新たに生まれているという。そしてそこには、パンデミックが促したAIの進化も関係している。

フランスでは個人宅向けプールが人気、一方で“脱税プール”も

 COVID-19の流行、そしてそれに伴うロックダウンなどの外出制限措置によって、自宅内で過ごす時間が増えた。日本でも「おうち時間を楽しむ」といったコンセプトで、自宅で楽しめるものやサービスの消費が増える傾向が見られるが、フランスでは自宅にプールを設置する人が増えているそうだ。

 Federation des professionnels de la piscine(FPP)というスイミングプールの関係者団体が発表した調査結果によると、フランス国内における個人宅向けプールの設置面数は、2021年に24万4000面増えて、プール建設業者の売上高は前年比32%増となった。その結果、現在フランス国内には、個人宅向けプールがおよそ320万面存在しているという。COVID-19の発生以降、売り上げが7倍になったという業者の声も報じられている

COVID-19の発生以降、売り上げが7倍になったという業者も

 こうした業者の売上増は当然ながら税収増につながる。一方で、別の理由で個人宅向けプールの増加が税収増につながる場合もある。それは不動産物件の資産価値の向上だ。プール付きの邸宅は、当然ながらそれだけ資産としての魅力が高くなり、評価額が上がる。そのためプールを増設したことを届け出ると、固定資産税など各種の税金額も上がるわけだ。

 しかし固定資産税の増加は、そうすんなりとは実現されない。住宅の所有者にとっては、税額の増加は厄介ごとでしかない。プールの増設も決して安くはないのに、その上税金のアップまで――ならば届け出ないでおこう、という人が出てくるわけだ。

 もちろんそうした税金逃れをしようとする人々は、以前から存在していた。しかしコロナ禍で人々と面と向かって接触することが避けられるようになった結果、税務当局の関係者が直接現地に出向き、「未届プール」を確認するというのも難しくなっている。そこで編み出されたのが、テクノロジーを活用したリモート調査手法だ。

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