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台風14号被災、テレビは使えずネットは錯綜 あのとき「もっとも頼れた」情報源は小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2022年09月29日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

避難しようと思ったら……

 ところが、である。宮崎市が開設した防災サイトで確認すると、なんと最寄りの避難所はどこも開設されていないという事がわかった。市内のほとんどの避難所は、開設されていない。こうしたサイトに自力でアクセスできなかった人は、念のために避難を、と最寄りの避難場所へ行っても、開いてないという結果になる。

宮崎市のサイトに掲載されていた避難所開所情報

 また開いている避難所も、満員になっているところがある。満員の情報はテキストなので、「Yahoo! 防災速報」にも流れてくるが、そもそも避難所が開設されているかの情報は、把握していないという事である。

避難所の満員情報

 現在のところ、避難所開設のような情報はフォーマットが統一されておらず、これらを網羅して反映するには膨大な手作業となり、そこまではやれないという事だろう。現在行政DXが話題になっているところだが、すくなくとも防災情報は統一フォーマットに流れるようにしないと、こういた広域の防災アプリとは情報がつながらない事になる。

台風通過後に停電が発生 しかも長い

 接近する台風に対して、海岸や河川増水の状況がどうなっているかなどは、自分ではとても見に行けない。だがリアルタイムでどうなっているのか知ることができるのは、テレビの良さだろう。

 鹿児島県に上陸したのは18時頃で、夕方のニュース枠では各局とも台風情報の特別編成になっていた。だが19時台になると、日曜日のゴールデンタイムである。NHKはそのままニュースを続けているが、民放は通常放送に戻り、データ放送で台風情報を伝えるのみとなった。

 21時台に再びニュース枠に戻ると、各局とも台風情報に戻った。だがそこから伝わってくるのは、これから台風接近に備える熊本・福岡の情報ばかりになってしまい、すでに通過した鹿児島・宮崎の情報が手に入らなくなった。今後は次第に風雨が弱まるとはいえ、山の方で降った雨が川に集まってくるのはこれからである。河川の氾濫に警戒が必要なタイミングで、テレビからは地元の情報が得られなくなった。

 自治体が発令する警戒情報の変化は、ネットとにらめっこすることになる。しかしネットはプル型メディアなので、こちらから見に行かないと情報が分からない。風雨はまだ収まる傾向を見せないが、夜も更けるにつれて新しい情報も入ってこなくなったため、その日はそのまま就寝した。

 一夜明けた19日は敬老の日で祝日。雨は上がったものの、ときおり思い出したように突風が吹く。本日妻の勤務があるのかどうか、連絡を待っていた朝7時過ぎ、今頃になって停電した。

 2年前の台風では深夜に停電したが、もともと寝る時間帯だったのでそれほど影響がなかった。だがこれから台風の片付けなどが始まるタイミングでの停電は、ダメージが大きい。テレビは全く使えなくなり、有線引き込みのネットもONUなどの機器が動かないため、不通となった。一方で携帯キャリアによる通信は使えたのが幸いである。東日本大震災以来、各キャリアは災害通信に力を入れており、これまで台風で通信不能になった事はまだない。

 せいぜい1〜2時間で回復するだろうとたかをくくっていたが、これが思いのほか長丁場となった。筆者のマンションは電動ポンプで水道を屋上まで揚水しているので、停電すると水道も出なくなる。トイレ用として風呂に水を張っていたのと、ウォーターサーバーを契約していたので飲み水には困らなかったが、水道が使えないと食器が洗えない。

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