The Mergeでは実際に何が行われたのか?
The Merge=統合という言葉のとおり、行われたのは2つのブロックチェーンネットワークの統合である。
1つはこれまでPoWで維持されてきた従来のイーサリアムブロックチェーン(PoW)のネットワークで、今後は「エクセキューションレイヤー」と称されるようになる。もう1つは2020年に起動したビーコンチェーン(PoS)と呼ばれるネットワークで今後は「コンセンサスレイヤー」と称される。
The Mergeとは、混乱を避けるために独立して開発・運用されてきたこの2つのネットワークを統合し、ネットワークの整合性を保つ機能を従来のPoWイーサリアムからPoSビーコンチェーンへと移し替えることを意味する。
The Mergeのプロセス自体はこれまで段階的に実行されてきたが、その最終プロセスが2022年9月15日に完了した。その結果として、現在のイーサリアムはPoSのアルゴリズムで維持されている。
逆に言えば、それ以外の一般の人が触れられるユースケース部分での変化はほとんど生じていない。
例えば、今回のThe Merge以前と以後とでイーサリアムの処理性能は変化していない。これは冒頭で説明したとおり、The Mergeがスケーラビリティ向上のためにシャーディングを行う下準備にすぎないからだ。
同様にイーサリアムを利用する際のトランザクション手数料も変化しておらず、これらは今後実行が予定されているシャーディング以降に改善が期待されている。
一方、PoWからPoSに移行したことで大きな変化があったのはマイニングの事業環境だ。ブロック生成時に得られるマイニング報酬は90%削減され、1日あたりわずか1600ETHになった。
ビットコイン・イーサリアムの大手マイニングプール「f2pool」は、イーサリアムマイニングの終了について発表を行っているが、一方でPoSを利用したステーキングの仕組みに対応する「Ethermine」のような事業者もいる。
一般の人々にとって最も影響が大きいのはイーサリアムブロックチェーンを維持するために投じられてきた燃料消費が激減することだろう。PoSへの移行によってネットワークのエネルギー消費量は最大で99.95%削減すると予測されている。
イーサリアムの創始者であるVitalik Buterin氏はこれを受けて、「マージにより全世界の電力消費量を0.2%削減できる」と発言し、これまでに生じていた環境負荷の大きさを伺い知れる内容として話題となった。
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