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感染者と10分会話でコロナを検出できるマスク 結果はスマホに通知 中国の研究チームが開発Innovative Tech

» 2022年10月03日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 中国のTongji Universityの研究チームが開発した「Wearable bioelectronic masks for wireless detection of respiratory infectious diseases by gaseous media」は、感染者と10分間会話しただけで微量の新型コロナウイルス(COVID-19)を検出できるウイルスセンサー付きマスクだ。空気中に漂うウイルスを検出すると、スマートフォンにその結果を通知してくれる。

マスクの外側に搭載したセンサーで周囲のウイルスを検出できる

 マスクの内側にセンサーを配置し、自分がウイルスに感染しているかを検知するデバイスはこれまでも提案されてきたが、今回はマスクの外側にセンサーが備わっており、自分ではなく自分の周りにウイルスが漂っているかを検知する。

 しかし、このマスクは初期段階の研究に基づくものであり、ウイルス全体に対してテストされていない。現状は「H5N1」と「H1N1」という2種類のインフルエンザウイルスと、「SARS-CoV-2」というCOVID-19を引き起こすウイルスのタンパク質を検出できる。

 マスクの外側に内蔵したセンサーには、特定のタンパク質と結合するように設計されたDNAやRNAのアプタマーが含まれている。アプタマーは、ラテラルフロー検査でコロナウイルスのスパイクタンパク質を検出するために使用される抗体に似ているが、より小さく安定しているという。

 アプタマーがタンパク質と結合すると電荷が変化し、マスクに内蔵されたチップが指定されたスマートフォンに信号を送る。プロトタイプはN95タイプのフェイスマスクに実装した。

 研究チームは、プロトタイプマスクを密閉容器に入れ、コロナウイルスのスパイクタンパク質や2種類のインフルエンザウイルスのタンパク質を含む、感染者が咳をしたり話したりするときに出るような微量の液体を吹き付けてテストした。10分後、液体1ml当たり0.1fgのタンパク質を検出することができた。

実験時の様子

 ただし、このマスクが他のウイルスのタンパク質に遭遇したときに、どれくらいの頻度で誤った警告信号を出すかはまだ検証されていない。

Source and Image Credits: Bingfang Wang, Deqi Yang, Zhiqiang Chang, Ru Zhang, Jing Dai, and Yin Fang. Wearable bioelectronic masks for wireless detection of respiratory infectious diseases by gaseous media



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