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「テレワークは生産性を下げる」は妄想か? 社員を監視したいリーダー層にMicrosoftが警鐘ウィズコロナ時代のテクノロジー(1/3 ページ)

» 2022年10月05日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 COVID-19の終息傾向を受け、多くの企業がオフィスの再開・テレワークの縮小に踏み切っている。しかし「家族の介護があるために自宅にいられる時間を増やしたい」「遠隔地に住んでいるが希望の会社・職種で働きたい」などの理由から、パンデミック後もテレワークを継続する(あるいは通勤とテレワークを併用する「ハイブリッド型」で働く)ことを願う労働者も少なくない。

 そのため事務職などテレワークと相性の良い職種や業界では、今後もある程度の企業がテレワーク制度を存続させるだろうと見込まれている。しかしテレワークを巡る議論に、Microsoftから新たな一石が投じられている。それは「生産性パラノイア」と名付けられた問題で「それがテレワークを阻害しかねない」と彼らは訴えている。

Microsoftが指摘する「生産性パラノイア」とは

 Microsoftは9月22日、「Hybrid Work Is Just Work. Are We Doing It Wrong?」(ハイブリッドワークは仕事の一形態にすぎない。私たちは間違っていないか?)と題されたレポートを発表した。

「ハイブリッドワークは仕事の一形態にすぎない。私たちは間違っていないか?」

 これは通勤とテレワークが混在する「ハイブリッドワーク」が珍しいものでなくなったウィズコロナ時代に、企業のリーダーに求められるものは何かを探ることをテーマとしたレポート。調査対象は11カ国の2万人で、さらに「Microsoft 365の数兆件に及ぶ生産性シグナル、LinkedInの雇用トレンド、Glint People Scienceのインサイト」を分析したとしている。

 その結果、同レポートが企業のリーダーに推奨している行動の一つが「生産性パラノイアの解消」だ。パラノイア(偏執病、偏執症)とは、何らかの妄想に固執している状態を指す言葉だが、生産性に関する「妄想」に取りつかれているとはどのような状態なのだろうか。Microsoftはアンケートを行った結果の中で、次のような内容を紹介している。

Microsoftの記事から引用

 従業員に対して「普段の日に『仕事において生産的であると感じる』にどの程度同意しますか、または同意しませんか?」と質問したところ、同意する(つまり自分が生産的だと感じている)従業員の割合は、87%と圧倒的多数だったそうである。

 さらにMicrosoftは、Microsoft 365から得られたデータなどに基づいて「Microsoft Teamsの平均的なユーザーにおいて、パンデミック開始以来、週当たりの会議数がグローバルで153%増加」「会議の重複(ダブルブッキング)がこの1年で1人当たり46%も増加」といった従業員の生産性に関する分析結果を紹介している。

 そしてこれらの情報から、従業員は自らの生産性が高いと認識しているだけでなく、実際に「かつてないほど働いている」との結論を導き出している。ところがリーダー層はというと、彼らの多くがハイブリッドワークをしているチームの生産性に自信を持てない状態に陥っている。

 リーダーシップ層の調査対象者に対して「ハイブリッドワークへの移行がもたらす新たな変化について考えると、『従業員が生産的である』と自信を持って答えられますか?」と質問したところ、「生産的であると確信している」と答えたリーダーの割合は、逆に12%と少数派だったそうだ。

 その結果、労働時間や会議の回数などの活動指標は増えているのに、従業員が働いていないことで生産性が低下していると、リーダーが懸念している状況が生まれており、それをMicrosoftが「生産性パラノイア」と呼んでいるのである。つまり妄想に固執しているのは、リーダー側というわけだ。

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