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「テレワークは生産性を下げる」は妄想か? 社員を監視したいリーダー層にMicrosoftが警鐘ウィズコロナ時代のテクノロジー(3/3 ページ)

» 2022年10月05日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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パラノイアを解消するために

 だからこそ今回のレポートでは、「生産性パラノイアの解消」をリーダーに促しているわけだが、具体的にどのようなアクションが考えられるのだろうか。

 Microsoftはパラノイア解消に向けた動きの例として、「活動だけでなくインパクト(成果)にも報いるようにする」や「積極的に部下の声を聴くようにする」といった当然の対策に加えて、「OKR」「NO-KR」の活用を挙げている。

 OKRとは「Objectives and Key Results(目標と主要な成果)」の略で、Googleなど大手IT企業において、目標管理のための手法として採用されたことで注目を集めている。詳しくは関連記事を参照していただければと思うが、簡単に言えば、明確な目標を掲げると同時に、その達成度を測るための定量的指標を設定しておくというものである。

 また目標設定と評価のサイクルが、従来の目標管理に比べて短期間で行われる(数カ月で1サイクル程度の頻度)ことも特徴となっている。一般的にOKRを採用することで、従業員により大きな力が与えられると同時に、「自分は会社に対してどのように貢献できるのか」という意識を従業員が持ちやすくなるとされている。

 NO-KRについては、Microsoft社内で行われている取り組みとして「より重要な仕事を成し遂げるために、やらない仕事やプロジェクトを特定し、共有」すると説明しており、OKRを補足する手法として位置付けているようだ。つまりOKRで「何をすべきか」、NO-KRで「何をすべきでないか」を設定しておくことで、従業員がより自主的に適切な行動を取れるようになるわけである。

 とはいえOKRも、「O」の部分、すなわち目標設定を適切に行うのが難しいといった批判もある。従来の目標管理手法とは異なるものだけに、一朝一夕で定着させることはできないだろう。

 しかし従来の手法や、短絡的な監視という方法では、テレワークで働く従業員の生産性を損なってしまう恐れがある以上、ハイブリッドワーク全体で通用する管理手法へと速やかに移行しなければならない。現状で完璧とは考えられないアイデアでも、積極的にトライアル・アンド・エラーで適宜修正していく姿勢が求められている。

 コロナ感染者の「全数把握」見直しも、ウィズコロナ時代にふさわしいパンデミック警戒態勢を探るための取り組みの一つと考えられる。新型コロナウイルス対策としては、「正しく恐れる」ことが重要だという指摘がなされていたが、従業員の生産性についても「パラノイア」から脱して、正しく管理していくことが重要といえるだろう。

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