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「Meta Quest Pro」を「Quest 2」と比べても意味がない 22万円超のVR機器が生まれた理由(2/3 ページ)

» 2022年10月14日 10時30分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

Quest Proは「実験機」なのか

「ということは、Quest Proは実験機なの?」

 これに対する答えは「イエスでありノー」ということになるだろう。

 Quest Proに含まれる要素、例えば表情認識やカラーでのシースルーAR、カメラ内蔵のコントローラーなどに、「販売後もソフトをアップデートしながら可能性を検証していく」要素が非常に多い。

 だが一方で、MetaがQuest Proを販売する上で提示した「仕事のためのメタバースとVR機器」という話もまた、市場性が十分にあって価値があるものなのだ。少なくともMetaはそう信じているし、Metaとの提携を発表したマイクロソフトも信じているだろう。

ある意味最大の発表は、マイクロソフトとMetaの提携かもしれない

 会議やコラボレーションワークは重要であり、そこでメタバースを使うことには価値がある。単純に「空中にいくつものディスプレイ」を出すことだって、それはそれで便利なものだ。

シンプルな用途だが、「仮想マルチディスプレイ」は実際に便利な使い方だ

 そうした要素にはカラーによるシースルARや今のQuest 2よりも高性能なプロセッサ、PCやハイエンドスマホ並みに広いメモリフットプリント(Quest 2のメインメモリは6GBだが、Quest Proは12GB)、下側がそのまま見えやすい構造が重要。特に表示については、単純なディスプレイパネル解像度よりも、視野の中での画素密度の高さや、そこから来る文字の読みやすさなども必要になる。

画質向上は、文字の読みやすさが重要になるビジネス向けには重要な要素だ
プロセッサも、クアルコムの「Snapdragon XR2+ Gen1」に変更になった

 結果としてQuest Proは「家庭向け」よりも高くなる。

 だが、多くの人が仕事のために1000ドルから1500ドルのPCを買うように、仕事で必要、もしくは価値があると認められれば、少々高めの機器でも売れる可能性はある。

 VRにもメタバースにも「毎日使う用途」が必要だ。「仕事」というファクターはそうした用途になり得る。

 なお、Quest ProとQuest 2の違いの1つとして「バッテリー動作時間」が挙げられる。Quest 2は3時間ほど動作し、外部バッテリーなども充実してきている。一方でQuest Proの動作時間は「1〜2時間」とされており、ゲームやソーシャルVRにのめり込むには短い。

 Meta側の説明によれば、これは「ビジネスで使う場合には、1度の利用では1〜2時間が多い」という判断によるものでもあるという。ただ一方で、標準で充電用の台(クレードル)が付属し、「使ったらすぐ充電」という体制が取りやすい形になっているから……ということもあるようだ。

Metaの商品紹介ページから。机の上ですぐに充電しやすい形で使うことが想定されている

 この辺、「リビングで使うゲーム機」と「机で使うビジネス機器」という性質の違いも見えてくる。

 まあもちろん、一番の理由は「もっと持たせたいが今は無理」だからだろうが。

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