「Experiments with Google」は、Googleが人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。
この連載では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。実際に遊んだ体験レポートを通して、裏側にあるテクノロジーや、技術の活用方法とその目的を解説する。
読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。
暑い夏が続くと思ったら、急に涼しくなってきた。芸術の秋ということで、前回は入力したメロディをバッハ風にするAIサービス「Assisted Melody」を紹介した。Experiments with Googleはアート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」との連携が強く、音楽関係のコンテンツも多い。
そこで引き続き音楽をテーマにしたコンテンツを触ってみよう。今回は3D空間でシンセサイザーを演奏できるWebアプリ「AR Synth」を取り上げる。
最初に、楽器の歴史を振り返ってみたい。太古の昔から使われてきた打楽器の他、息を吹き込んで音を鳴らす管楽器、弦を弾いたり擦ったりして音を出す弦楽器などがある。楽器の種類はさまざまあるが、音を出す原理はこれらが基本だ。
ところが19〜20世紀にかけて、これまでと全く異なる原理で発音する楽器が登場した。電気回路で音を作る電子楽器だ。1920年に発明された「テルミン」以降、電気的な波形を組み合わせたり変形したりして音を出す「アナログシンセサイザー」や、電子データ化された音の波形を使う「デジタルシンセサイザー」、録音した音を加工して音楽に使う「サンプラー」など多種多様な電子楽器が生まれてきた。従来の楽器では不可能な表現が可能となったことで、新しい音楽が出てくるようになる。現代の音楽に電子楽器は欠かせない存在だ。
AR Synthはこうした伝説的な電子楽器のうち、名機と呼べる懐かしい機種を選んで3D空間に配置し、簡単に演奏できる。
AR SynthはWebアプリなので、PCやスマートフォンでここにアクセスすればすぐに使える。AR機能に対応しているスマホならAR版も楽しめるので、PCで操作に慣れたらぜひ試してほしい。
AR Synthで演奏できる楽器は、5種類ある。1つ目はアナログシンセサイザーの代名詞ともいえる米Moog Music社の「Moog Memorymoog」だ。80年代の製品で、複数の音(ボイス)を同時に出せるポリフォニック機で、各ボイスにオシレーターとフィルターが用意されている。しかもボイスの設定を記録できるメモリ機能も備えている。
2つ目は、Moog Music社の「Minimoog」に対抗すべく開発された、72年登場の「ARP Odyssey」だ。2つのボイスを同時に出せるようになった時期を代表するシンセサイザーに当たる。
3つ目は、日本のローランド社が78年にリリースしたドラムマシン「Roland CR-78」だ。当初はオルガンの伴奏用として開発されたが、独立した楽器として多用されるようになった。
4つ目も日本の製品で、赤井電機が86年に発売したサンプラー「Akai S900」だ。最長63秒の音を録音して、複数の音を組み合わせてリピート再生でき、ダンスミュージックの分野で活躍した。
5つ目は、1979年に登場したサンプル機能付きのデジタルシンセサイザー「Fairlight CMI」だ。ヒップホップやハウスといった分野の発展に貢献した。
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