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“まん丸お目め”の自動運転車で事故防止 研究のきっかけは? 東大研究室メンバーに聞いたCEATEC 2022

» 2022年10月18日 17時10分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 実用化に向け、国内外で研究が進む自動運転車。安全性の向上に向け、さまざまな企業・機関が取り組みを進めている。東京大学の五十嵐研究室もその一つだ。同大は自動運転車に“目”型のパーツを付けることで歩行者などに自動運転車の意図を伝え、安全性を高める研究をしている。

photo 展示物の実機

 9月にはVR技術を活用した検証実験の結果を発表。テクノロジー専門展示会「CEATEC 2022」(幕張メッセ、10月18〜21日)では、目を付けた車両の実機も展示した。この研究はどんなきっかけで始まったのか。研究に携わるチャン・チアミンさん(情報理工学系研究科創造情報学専攻五十嵐研究室特任講師)と戸田光紀さん(同学術専門職員)に聞いた。

ギョロッ! 車の目線で安全性向上 研究の全容は

 チアミン特任講師たちの研究は、モーター駆動で視線を動かせる目を、フロントバンパーに取り付けた車両を活用したものだ。両目の間に取り付けたセンサーで目の前の人やモノを認識し、目を動かすことで車両側の意図を伝える。

 戸田さんによれば、自動車に目を付けることで交通事故を低減するアイデアは研究者間で検討されていた既存のものだったという。今回の研究では、それを自動運転車に応用。当初は3DCGを活用した実験にとどまっていたが、企業から車両の提供を受けられたこともあって、実機の製作や検証にこぎつけられたという。

 9月に結果を発表した検証では、車両が走行・停止する様子を、道路を横断しようとする歩行者の視点で撮影。その様子をVR映像化した後、実験の参加者(18〜49歳の男女各9人)に歩行者視点で見てもらい、道路を渡るべきか止まるべきか判断してもらった。

 VR映像は目がある車両、視線に変化がある車両、通常の車両など複数パターンを作成。それぞれの結果を比較したところ、目の付いた車両で視線を向けると危険な道路横断を低減できる可能性があると分かったという。

photo 記者の動きに合わせて目が動いた

 CEATEC 2022で展示していた実機は前方にいる人を目で追いかけることが可能だった。車両自体は停止した状態だったが、記者が目の前に立って歩いてみたところ、5秒ほど遅れて目が追いかけてきた。

まずは予算と外部の協力を 研究のこれからは?

 戸田さんによれば、この研究は今後、大きく分けて2つの検証を進めていく方針という。1つ目は目を使ったコミュニケーションの充実だ。目の動きを通して、よりさまざまな情報を伝えられないか、模索と検証を重ねていきたいとしている。

 2つ目は歩行者が目に対してどんな反応をしていくかという検証だ。車両にドライブレコーダーを搭載するなどして歩行者の様子を観察したいという。

 ただ、いずれも具体的な内容やスケジュールが立っているわけではない。現在は追加の予算や外部の協力を募っている段階と戸田さん。CEATEC 2022にも宣伝の目的で出展したといい「次の計画に何かしらつなげられたら」(戸田さん)としている。

 「自動運転車と人との絆を深めるという観点で、どうしたらより人に優しい機械ができるのか、コミュニケーションを追求していきたい。個人的には、目だけではなく手もつけてジェスチャーするなど、他の手法やハードウェアも組み合わせていけないかと考えている」(戸田さん)

photo 戸田光紀さん(左)、チャン・チアミンさん(右)

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