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IP伝送からファイルベースまで1本化する「Creators' Cloud」 ソニーのプロフェッショナル戦略とは小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/3 ページ)

» 2023年01月13日 11時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

クラウドを中心としたワークフロー提案

 Inter BEE 2022で紹介されたソニーの新戦略「Creators' Cloud」は、これまでバラバラに展開してきた5つの技術を、クラウドを中心に据えてIPライブ伝送もファイルベースも1本のシナリオにまとめるというものである。2022年9月に開催されたヨーロッパ最大の放送機器展「IBC 2022」で、初めて紹介されたものだ。

5つのサービスをまとめた「Creators' Cloud」

 「C3 Portal」は、誤解を恐れずにざっくり説明すると、従来ファイルベースで撮影していたカメラ(カムコーダ)を、ワイヤレス・ライブカメラにしてしまうソリューションだ。カメラのUSB端子にスマートフォンをつなぎ、専用アプリ「XDCAM pocket」を通じてクラウドにライブストリームを配信する(ファイル単位のアップロードにも対応する)。スマートフォンがXperia PROであればHDMI入力があるので、HDMI出力しかないカメラも利用できる。

 そのストリームを待ち構えるのが、クラウド上の仮想スイッチャー「M2 Live」だ。ソニー独自プロトコル以外に、SRTやRTMPにも入出力で対応しており、ライブストリームをスイッチングして、その結果を配信プラットフォームへ向けて最大2箇所に同時出力できる。これは以前ヨーロッパで別名で開発していたクラウドスイッチャー技術をベースに、日本で開発しなおしたものだ。

 「Ci Media Cloud」は、ハリウッドで展開してきた素材共有および共同作業用のクラウドメディアストレージだ。高速アップロードとダウンロードに対応し、数多くのファイルフォーマットに対応する。

ファイルベースとライブストリーム収録両方に対応する

 「Navigator X」は、以前オンプレミス上で動いていたアセットマネジャーである。映像がファイルベースになると、その管理・検索にはメタデータの付与が必須になるわけだが、これらを自動化したり、台本とひも付けしてグループ化したり、たくさんの素材にバッチ処理をかけてアーカイブに流し込むといったファイル処理を行なうものだ。これをクラウド上に乗せて、クラウド上の素材にも対応させたものが「Navigator X Cloud」となる。

「Navigator X」の守備範囲

 「A2 Production」は、AIを使って画像解析を行なうサービスである。放送におけるAI画像解析は、古くは膨大なアーカイブ映像から顔認識により特定の人物の動画を抽出するといった用途に使われてきたが、昨今はインタビューの文字起こし、ハイライト映像の自動生成、テロップ情報の抽出といった、多方面に渡る解析が可能になっている。これはソニーのAI以外にも他社のAIエンジンとも連携できる。流れとしては、「Navigator X」の自動処理の一環として動かすイメージである。

「A2 Production」の動作フロー

 「Creators’ Cloud」は、映像伝送からLIVE制作、解析、アーカイブまで、全てクラウド上で完結できる制作プラットフォームであり、利用者はこれらのどこかの部分にくっついて、リモートで作業できるわけである。

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