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オンライン試験って不正し放題じゃないの? 英語技能試験のDuolingoに聞く対策法 技術でむしろ厳密に(1/2 ページ)

» 2023年01月14日 10時00分 公開
[谷井将人ITmedia]

 本格的な受験シーズンが到来し、親子ともに緊張感を増している。合格のために英語検定などの資格試験を受験した高校生も多いだろう。日本ではまだ普及していないが、資格試験の受験方法の一つとして「Computer Based Testing」(CBT)と呼ばれる形態がある。PCがあれば受験できる手軽さが売りの方法だ。

 CBTは簡単にいえば、PCを使ってオンラインでテストを受けられる試験方式。受験票を紛失する恐れがなく、特に自宅PCで受験できる場合は、遠方の試験会場に出向く必要もない。試験を実施する団体としても、試験官の配置といった負担が軽減できる。実際はCBTセンターというPCが設置された会場で受験することも多いが、それでも会場が全国各地にあるため移動は少なくて済む。

 しかし、不正対策は大丈夫なのか。自宅で一人で受けられるならカンニングし放題なのではないか? PCで検索しながら回答できてしまうのではないか?

photo Carrie Wangさん(Head Of Duolingo English Test & Regional Business Lead Asia)

 2022年の大学入学共通テストでは、スマートフォンを使って問題を外部に送信し、解答を得るという不正が見つかり、社会的に問題視された。受験に使われることもある資格試験で、不正し放題な状況があってはいけないはずだ。

 もちろん、CBTでも厳密な不正対策が実施されている。今回は英語資格試験「Duolingo English Test」(DET)を実施している米DuolingoのDET担当責任者、キャリー・ワンさん(アジア地域ビジネス統括)に、CBTにおける不正対策、情報セキュリティ対策について聞いた。

 「実は、オフラインの試験より不正検知の精度は高いですよ」(ワンさん)

1人の受験者にAI+複数の試験官

 DETはCBTの中でも、自宅PCで受験できるタイプの資格試験。安定した通信環境と、オンライン会議ができるPC、1人で静かに受験できる空間さえ確保できれば、どこでもテストを始められる。試験は、他に人がいないプライベートな部屋で、Webカメラとマイクを付けた状態で受ける。PCで専用デスクトップアプリを立ち上げて回答する仕組みだ。

photo 受験に必要なもの

 Duolingoといえば語学学習アプリの印象が強いかもしれないが、DETは大学入試の選考において英語力の判断基準として正式に使える試験でもある。日本での導入事例はまだ17校しかないが、世界的には国際大学ランキング(US News Ranking)トップ100に入る大学の9割以上が採用している。

 そんな試験が不正し放題ではもちろんいけない。ではどうやって不正を防いでいるのか。

 「CBTはオフライン試験と違い、現場に試験官がいるわけではないので、不正があっても止めに入れません。しかし、全ての行動をWebカメラなどでレコーディングできるので、不正があったと判断すれば、点数を認定しない処分を下します」(ワンさん)

 受験者が欲しいのは試験の点数だ。それを与えないことが最大のペナルティーになる。

 試験映像はAIと資格を持った複数の担当者が何重にもチェックする。過去の試験映像を学習したAIが不正が疑わしい箇所にフラグを立て、人間はそこを特に注目しながら映像を確認する。

 オフライン試験では、数名の試験官が大量の受験者を見て不正がないか確認しているが、DETの場合は1人の受験者に対して試験官が複数いる上、AIによる不正検知がある状態だ。

 視線などもチェックするため、Webカメラに写っていないところにカンニングペーパーを置いたとしても不正として検知できる。どこかから不審な音がすればそれもマイクで拾って判断材料とする。

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