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「MacBook Pro」は高いのに「Mac mini」が安くなった理由をちょっと考えてみた

» 2023年01月22日 16時30分 公開
[山川晶之ITmedia]

 1月17日の深夜にいきなり発表された新型「MacBook Pro」と「Mac mini」。MacBook Proは、順当に新チップ「M2 Pro/Max」を搭載し、長らくApple M1からアップデートがなかったMac miniは、待望の「M2」に加え、上位チップのM2 Proが選択できるようになった。

「Mac mini」
「MacBook Pro」

 話題になったのがMac miniの価格である。2022年は歴史的な円安の影響を受け、6月にMac全体が値上げ。Mac miniもベースモデルが7万9800円から9万2800円に引き上げられた。ところが、M2に刷新されると8万4800円スタートに。8000円安くなっている。

 一方で、さらに値上げされたのがMacBook Proだ。M1 Proのベースモデルはもともと23万9800円だったが、6月に27万4800円へ引き上げられた。今回のM2 Proを搭載した新モデルはさらに高くなり、28万8000円スタートとなっている。Mac mini、MacBook Proともに、メモリとストレージ容量は同一。チップのみの変更でそれぞれ値下げ/値上げしている。

 Mac miniとMacBook Proで違いがあるのが不思議だが、結論をいえばどちらも実質的には値上がりしている。Mac miniが安く見えるのは、米国のスタート価格(税別)が699ドルから599ドルに引き下げられたためだ。値上げ後のM1ベースモデルは、1ドル120.7円だったのに対し、M2のベースモデルは1ドル128.7円と、ガッツリ引き上げられている。もし、レートがM1モデルと同じだったらM2のベースモデルは税込みで約7万9500円あたりになる計算だ。

M1版「Mac mini」の価格
M2版「Mac mini」の価格 512GBストレージモデルも同じく100ドル引かれている

 一方、MacBook Proは1999ドル(税別)スタートで変わらず。こちらは、値上げ後のM1 Proベースモデルが1ドル約125円なのに対し、M2 Proベースモデルは約131円に引き上げられた。今の為替相場からすると若干円安寄りで、Appleは相場をまだ踊り場と認識しているのだろう。

 結局のところ、22年6月の値上げ以降、Appleは既存のMac製品を値上げしておらず、6月時点のレートを反映したままになっていた。しかし、実際はさらに円安が進み、レート差からくる損失をAppleは被っていたことになる。今回の新モデル発表に際し、ようやく現実に沿ったレートに修正できたのだろう。

 もしMac miniが本国で値下げされていなければ、日本だと9万9000円あたり(699ドルに現レート反映後、消費税を付加)になっていた可能性がある。スタート価格が引き下がったので問題ないのではという声もあるだろうし筆者も同意見だが、BTOでカスタムすると新レートがジワジワと効いてくる……。

Mac miniが100ドル安くできた理由を妄想する

 じゃあそもそも、なぜ100ドル安くできたのか。ここからは完全に妄想の話だが、真っ先に考えられるのは量産効果によるものだろう。M2チップは売れ筋のMacBook AirやiPad Proでの採用実績がある。すでに相当数量産されており、1チップあたりのコストは下がるだろう。M2 Pro/Maxのように巨大サイズのダイではないため、製造コストは相対的に低い。

 筐体のデザインもM1モデルを踏襲している。何なら13年近くデザインは変わっておらず、ボディの製造コストはかなりこなれていそうだ。直近のNANDやDRAM価格も、インフレによる需要低下で在庫がだぶつき下落している(これは他のMacにも当てはまる)。あとは、最安Macとしてより広く普及を狙ったプロモーション的な価格設定……辺りだろうか。Macに興味があるWindowsユーザーがサブマシンとして導入するには手頃なチョイスだ。

新型とほぼデザインが変わらないMac mini(Mid 2011) 実際はMid 2010モデルでデザインを刷新しているが、光学ドライブを廃止したのはMid 2011から(出典:Mac OTAKARA

 安くM2マシンを導入できるというのは純粋にありがたいが、値下げを他のMacに期待するのはなかなか難しい。製造業にとってここ数年はコスト高になる要因ばかりだし、特にノートPCなどは液晶パネルやバッテリーなどパーツ点数もグッと増えるので、チップのコストが本体の製造コストに与える影響は相対的に小さくなってしまう。何より、国内価格については為替が全てを握っている。大きく円高に動かない限り、残念ながらMacに関しては当面今のプライシングが維持されるだろう。

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