開発に当たっては、IIJが自社のクラウド環境上で社内向けに提供しているKubernetesディストリビューション「IKE」(IIJ Kubernetes Engine)を活用した。IKEは2018年にローンチされ、社内システムのインフラとしての機能を担っている。一方で社内に広く開放しており、エンジニアがコンテナ技術を活用した実験を気軽にできる環境としても機能している。
IKEの構築を主導し、Kubernetesの活用を推進する田口景介氏(ネットワーク本部 SRE推進部長)は「コンテナはここ3〜4年で盛り上がってきた技術であり、これを浸透させるには、クライアント向けの本番環境だけ整備したところでなかなかチャレンジしづらい。誰でも用途を問わず使える環境を提供しようというのがIKEをスタートさせた狙いの一つだった」と話す。技術工作室の取り組みも、IKEの活用という観点から有意義な事例になったという。
「(IKEには)業務システムを開発して動かしていたり、自分で作ったビジネスと関係ないツールを動かしていたりする人もいる闇鍋状態のクラスタが一つあり、これを今回、技術工作室の案件で有効活用してくれた。こうしていろいろな知見を身につけることで、本業のビジネスに対しても有効な影響を与えていくことを期待している」(田口氏)
技術工作室の取り組みは、参加したエンジニアにとっても有意義だったようだ。QRコードを活用するアイデアの発案者である白崎氏は「別件でQRコードを使うシステムを構築していて、今回の課題にも活用できそうだと考えて提案はしたが、それで自分の役割は終わりだと思っていた」という。
しかし、マネジメント層の立場ならではの課題意識が、さらに一歩踏み込む推進力になった。「技術工作室の活動自体には注目していて、もっと社内に広めないといけないと思っていた。初期の事例をきちんと成功させないと後が続かないので、自分も手を動かしつつ最後まで見届けないといけないと考えた」(白崎氏)
坂口氏も、当初は「本当はちょっと口だけ出して逃げようかなと思っていた」と笑う。一方で、今回の案件に参加した理由を次のように説明した。
「QRコードの知見を蓄積していて一家言あったし、IKEについても、遊べる基盤ができたぞということでローンチ直後から触っていた。自分なりに検証してきたこれらの技術を課題解決に役立てる案が出せそうだったので、自分の知見を試すチャンスだと思った。本業のチームにもそれを応援してくれる雰囲気があるし、社内で自分のプレゼンスを上げることにつながるだろうというモチベーションもあった」
短時間で出来上がったプロトタイプを基に、広報部側の詳細な業務フローなどを改めて見直しながら修正を繰り返す中で、エンジニアとしての経験値も上がったというのが坂口氏の実感だ。
「技術工作室の案件では、どういうフローで仕様を詰めていくか定まっていなかったこともあり、何も考えないとどんどん要件が膨らんでしまうという課題があった。システムをつくる側と使う側の視点や価値観の違いなどをすり合わせる中で、エンジニア側にもバイアスがかかっている部分があると感じ、勉強になったし楽しい経験ができた」(坂口氏)
技術工作室では今回の事例のほか、オフィスのレイアウト変更時にレイアウト案を自動作図するシステムなど、いくつかのプロジェクトが進行しているという。
「イノベーションの創出には、アイデアを練るだけではなく、何かしらの形にしてみて、失敗して、また作り直してといった、ユーザーの声を聞いて発展させていく過程が必要不可欠。技術工作室のプロジェクトではその経験を積むことができる。社内でもっと気軽に手を動かして、気軽に失敗するというサイクルをもっともっと加速させたい」(藤本氏)
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