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PFN、家庭用ロボット市場に参入 “家具を運ぶ”だけのシンプル機能、月額は携帯料金程度 事業の展望は?

» 2023年02月01日 19時54分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 AIベンチャーのPreferred Networks(PFN)の子会社で、ロボット開発に取り組むPreferred Robotics(東京都千代田区)は2月1日、同社初の家庭用ロボット「カチャカ」を発表した。人の指示で自動で動く家具「スマートファニチャー」を目指した自律移動ロボットで、同社の礒部達CEOは「“家具が動く”という未来の暮らしを実現できる」と話す。

自律移動ロボット「カチャカ」

 カチャカは、人の声や専用のスマートフォンアプリからの指示を受けて、専用家具とドッキングして指定の場所まで自動で移動させることができる。利用例として料理の配膳や下膳や、荷物の運搬などがあるとし、「“家具を運ぶ”というシンプルな機能だが、アイデア次第で使い方は無限に広がる」(礒部CEO)と説明する。

Preferred Roboticsの礒部達CEO

ロボット開発は“総合格闘技”

 カチャカの開発コンセプトは「もし家具が動いたら?」という問いかけだ。礒部CEOは「家具の種類によって家の役割は変わり、一度決まるとその位置は固定されるのがほとんど。そのため、人間が家具の周りを動いて生活をしているが、もし家具が動けばその常識は一変する」と話し、既存の住環境へのイノベーションを提案する。

 ロボットが家具を運ぶ──一見するとシンプルな作業に思えるが、これを家庭内で実現するのは非常に困難であったという。礒部CEOは「理由は住環境の多様化にある。工場や倉庫などとは違い、床材や家具、住む人たちやペットなど世帯によって千差万別。5000万世帯には5000万通りの異なる住環境がある」と説明する。

料理の配膳など一部家事の手伝いが可能

 家庭内でのロボットの自律移動を実現のために、同社では独自のハードウェア技術とソフトウェア技術を融合させることで、カチャカの開発に挑んだ。カチャカの自己位置を推定する「SLAM技術」、目的地までのルートを最適化する「ナビゲーション技術」、直感的な操作を実現する「音声認識技術」、これらの3つのテクノロジーに力を注いだとしている。

 「ロボット開発は“総合格闘技”であると考えている。3つのテクノロジー以外にも、ハードウェアの設定や組み込み技術、品質管理、画像処理、生産技術などの多岐にわたる技術を高いレベルで同時に実現しなければならない。これらを実現できたのは、深層学習技術の強みを持つPFNと、ロボット開発のエキスパートが多数在籍する当社とのシナジーがあったからこそ」(礒部CEO)

事業展開は“中長期視野”

 カチャカ導入には本体購入の他、専用家具とサブスクリプションサービスも必要になる。本体の料金は月額4980円(48回分割払い)で、一括では22万8000円。専用家具のシェルフは月額520円(48回分割払い)、一括では2万3800円から利用可能で、サブスクリプションは月額980円。“未来の暮らし”を実現するには3点全てが求められる。

カチャカ本体と専用家具、サブスクリプションサービスが必要

 親会社のPFNの西川徹CEOは「非常に高価なハードを実装すればロボットが解決できる問題は増えるが、家庭用ロボットでの提供となると価格設定が重要になる。カチャカの月額料金は携帯電話料金程度の手の届く価格帯になることを意識して設定した」と料金について言及した。

PFNの西川徹CEO

 同社初のtoC向けハードウェアということもあり、ビジネスとしての見通しにも注目が集まるが、カチャカの目標販売台数については非公開としている。「非常に新しいプロダクトであるため、中長期的な視点でしっかりと市場をつくりたい」(礒部CEO)

 今後の展開や機能改修については、さまざまなアイデアを検討しているという。対応家具を増やすことはもちろん、センサーやカメラ付きロボットが家の中を動き回ることで、どのような付加価値を生み出せるのか。これらを精査した上で展開していきたいと、慎重な姿勢を見せている。

 PFNでは、2018年から個人向けのロボット開発の開発に取り組んできた。21年のPreferred Roboticsの設立もその一環となる。西川徹CEOは「今回のカチャカのリリースはわれわれにとっても大きな意味を持つ」と初の家庭用ロボット発表への意気込みを語った。

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