一度拡散した不適切な写真や動画は、消えることはない。俗にデジタルタトゥーと呼ばれるゆえんである。今回の一連の動画も、メディアに掲載されるものはぼかしなどで処理してあるが、ちょっと本気出して探せば、顔出し動画のコピーを見つけることは難しくはない。
2019年時点の炎上は、Instagramの「ストーリーズ」にアップされたものが、Twitter経由で人気YouTuberに「通報」という形で転載されている。このYouTuberは、炎上動画をメインコンテンツとして捉えておらず、ライブ配信の中で紹介したにとどまる。だがTwitter上の動画がメディアに補足され、ネットでの炎上よりも先にネットニュースとなったのち、テレビ局にも拡大した。
もちろん今回もネットニュースやテレビでも取り上げられているところだが、それよりも気になるのは、こうした不適切動画を転載することでビューを集めている配信者やブログ運営者が増えている事である。こうした不適切行為許すまじ、という論調だが、それらには広告やアフェリエイトが付いている。
報道機関だって人の不幸でメシを食っていることには変わりないとはいえ、当事者でも報道機関でもない無関係の個人も、炎上動画を利用して利益を得るようになった。こうした炎上にさらなる燃料を投下して利益拡大する行為のタチの悪さについては、もう少しちゃんとした議論があってもいいように思う。
もう1つお金がらみの話で気になるものとしては、スシローの案件は株の空売りに関係しているのではないかという指摘が見られるところである。
空売りとは、手元に持っていない株式を信用取引などを利用して売り、株価が下がったところで買い戻すことで利益を得る行為である。株価の差が利益となるわけだから、株価が下がることが予測できている場合には、確実に利益を得ることができる。これ自体は違法行為ではなく、株式下落時にも投資活動が止まらないとか、すでに持っている株式のリスクヘッジのために行なうといったメリットがある。
IR Bankによる空売り履歴によれば、スシロー運営会社である「FOOD&LIFE COMPANIES」の株に、1月13日から突然個人による空売りが始まっている。
スシローの不適切動画は1月29日頃に拡散され始めているが、初出は2週間前という情報もある。それでも1月15日ごろであり、13日からの空売りスタートの説明が付かない。つまり不適切動画投稿は、タイミングが事前に予定されていたのではないか、と推測される。
炎上が拡大し、株価が下がれば下がるほど、空売りの利益は大きくなる。空売りしたものからすれば、多くの人がその正義感で炎上を大きくすればするほど、もうかるわけである。実際にこうした「仕掛け」が行なわれたという確証はないが、原理的には可能である。
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