インボイス制度の導入により電力会社などに生じる損失を、一般家庭の電気料金の値上げで賄う方針を資源エネルギー庁が示し、物議を醸している。同庁はパブリック・コメントを募集しているが、その文言についても問題視する声が上がり、参考資料を追加する事態となった。
現在のFIT制度では家庭の太陽光発電システムなどで発電した電気を固定価格で買い取ることを電力会社に義務付けているが、売電する側の多くは小規模事業者でインボイス(適格請求書)発行事業者に該当するケースは少ない。このためインボイス制度導入後、電力会社は仕入れ税額控除ができなくなり、新たな消費税負担が生じるという。
新たな負担は全体で58億円程度(2023年10月〜24年3月)とみられる。資源エネルギー庁は有識者会議の提案に従い、一般家庭の毎月の電気料金に含まれる「再エネ賦課金」で賄う方針を示した。この案は「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則等の一部を改正する省令案等」として、現在パブリック・コメントを募集している。
しかし燃料価格の高騰などで電気代の値上げが続き、一般家庭にとっても負担が大きくなっている時期。17日に開かれた衆議院財務金融委員会では日本共産党の田村貴昭衆院議員がこの省令案について質問し、「なぜ電力会社だけに国民の負担で補てんする措置をとるのか」と追求した。さらにパブリック・コメントの説明が分かりにくい点にも言及。このやり取りの動画がTwitterなどで拡散し、様々な意見が噴出している。
委員会での指摘を受け、資源エネルギー庁は22日、パブリック・コメントのページに「参考資料」を追加した。インボイス制度導入後に電力会社に生じる新たな消費税負担について「来年度についてはFIT制度において手当てすることとしてはどうか」と記した。再エネ賦課金には触れていない。
資源エネルギー庁に確認したところ「FIT制度において手当」は再エネ賦課金として電気料金に上乗せすることに間違いはないという。その上で「義務として買い取っている電力会社に追加負担を求めることは難しい。(今回の案は)3回にわたる有識者会議を経て決めた」と説明している。
一般家庭の負担額については「全体では58億円だが、1kWhあたりの単価に換算すると0.007円。毎月の再エネ賦課金の0.2%程度になる見通し」として理解を求めた。なお24年度以降の対応については「改めて有識者会議等の意見を聞くことになるだろう」と話している。
パブリック・コメントの受付は3月11日まで。
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