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「どげんかせんといかん!」 WBC配信で“民放の限界”をひしひしと感じた地方民の悩み小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2023年03月28日 13時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

どげんかせんといかん……のだが

 WBCの全試合が宮崎でテレビ放送されなかったというニュースを見て、元宮崎県知事でタレントの東国原英夫氏が「本当にどげんかせんといかん!」とTwitterでつぶやいている。

3月16日の東国原氏のツイート

 Amazonプライムかケーブルテレビに加入していれば見られるが、無料ではない。ワールドカップの際はABEMAが無料配信を行なったので事なきを得たが、国民の多くが関心のある国際スポーツイベントの情報を得るのに、居住する地域によって無料と有料に分かれるということは、情報の公平化の点でどうなのか、という話になる。だがそれを実際にどげんかする方法があるのかというのは、なかなか難しい。

 シンプルに考えれば、無料放送では見られない、つまり日本テレビとテレビ朝日系列の地上波放送ネット局が宮崎にない事が問題だといえる。ということは、宮崎に新しく日本テレビかテレビ朝日系列のネット局を開局するのが最初に考えられる解決策になる。

 しかしただでさえテレビ離れ著しい今これからの時代、新規に民放テレビ局を作ってペイするのか。経営母体はどこになるのか、地元広告収入は得られるのか、課題は山積だ。

 他県の放送をそのままケーブルテレビで見せるという方法もある。過去、徳島県では、地デジ化の影響で大阪の電波を越境受信できなくなった際に、「全県CATV網構想」(デジタルとくしま推進プランについて)を打ち出し、県の隅々までケーブルテレビ網を敷設した。

 ただこれも、10年以上前の話である。当時はテレビ放送とブロードバンド回線の両方を同時に充実させる方法として妥当性があったが、5Gの普及も視野に入った現在、大工事してワイヤーを張りまくるというのもどうなの、という気がする。

 ネットでもいいから無料で見られればいいということなら、「TVer」によるリアルタイム配信は1つの解決策ではある。だが今回WBCは、TVerでの配信はなかった。恐らく放映権をネット放送の分まで買ってないのだろう。そこまでして放映権を買っても、TVerではペイしないだろうという判断には一定の妥当性がある。

 例えば国の税金や、NHKの受信料でネットの放映権を買うという枠組を作るのはどうか。しかしこれは受益者が全国民ではなく、一部の県民に限定されるという問題がある。全国民のコンセンサスを得るのは難しそうだ。

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