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「どげんかせんといかん!」 WBC配信で“民放の限界”をひしひしと感じた地方民の悩み小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年03月28日 13時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 WBC熱はおよそ1カ月前から、宮崎キャンプで幕を開けた。大谷翔平選手は宮崎入りしなかったが、ダルビッシュ有選手が初日から合流し、練習場となった「ひなたサンマリンスタジアム」には多くのファンが詰めかけた。練習を見るにもチケット制で人数制限されていたが、球場の外には多くの屋台が出て、毎日が縁日のようであった。

 もともと宮崎は、野球に縁の深い土地である。読売ジャイアンツは王・長嶋の時代から冬の宮崎キャンプが恒例となっており、筆者ぐらいのオジサン世代はジャイアンツから野球の面白さを学んだ。今では福岡ソフトバンクホークスとオリックス・バファローズの3球団が、同時にキャンプに訪れる。2023年はそれに加えて「侍ジャパン」の4チームだったわけだ。

 そんな野球熱の高い宮崎だが、WBCの一次リーグから米国に渡っての決勝トーナメント7試合のうち、テレビ放送されたのはたった3試合だけだった。1次リーグ中国戦、韓国戦と、準決勝のメキシコ戦だけである。

 宮崎県にはテレビ民放局が2局しかない。UMKテレビ宮崎はフジテレビ系列ではあるが、日本テレビ系列とテレビ朝日系列の放送も流す。こうした複数の系列の放送を流す局を、「クロスネット局」という。もう1つのMRT宮崎放送もTBS系列ではあるが、曜日によってはテレビ宮崎が放送しない日本テレビ、テレビ朝日、テレビ東京の番組も放送する。そう考えると一応東京キー局の番組はそこそこ見られることになるが、5局を2局にまとめるわけだから、全ての番組が見られるわけではない。

 今回のWBCはTBSとテレビ朝日が交代で放送しているが、TBSが放送する回はMRT宮崎放送で見られる。しかしテレビ朝日が放送する回は見られないというわけである。

 日本中が熱狂した決勝戦はテレビ朝日の放送だったので、宮崎ではリアルタイム放送していない。同日夜、TBSが急きょ決勝戦の模様を再放送したので、それを見た宮崎県人は多かっただろう。だが結果を知ってから見るのでは、スポーツニュースを見ているのと変わらない。スポーツは結果が分からないものを見るに限る。

 近隣のテレビ朝日系列のテレビ局には、KKB鹿児島放送がある。宮崎県下でも鹿児島寄りの市町村、都城市や串間市などでは越境受信できるため、リアルタイムで見られた可能性が高い。

 筆者宅は宮崎市内にあるが、マンション設備としてケーブルテレビが入っているため、KKB鹿児島放送とKYT鹿児島読売テレビも無料で視聴できる。ケーブルテレビ加入宅では、WBCの全試合がリアルタイムで視聴できたはずだ。

ネット放送では見られるが、有料

 一方「Amazonプライムビデオ」では、WBCの日本戦は全てリアルタイムで見る事ができた。テレビで視聴できる地域にお住まいでも、手元にテレビがないのでAmazon プライムで見たという人も多いかもしれない。

 筆者は子供たちがテレビで視聴している隣の部屋で、仕事しながらAmazonプライムでチラ見していた。テレビ放送に比べると、だいたい40秒ほど遅れて放送される。隣から子供たちの「ヨッシャー!」という声が聞こえてからどれどれとAmazonプライムビデオを見ると、ちょうど肝心のシーンの前段階から視聴する事ができた。

 Amazon プライムビデオの放送も、なかなか力が入っていた。国際放送の映像を使いながら、地上波とは別の独自カメラも出していた。スコアや選手情報も独自で、実況は文化放送の斉藤一美アナウンサー、解説は里崎智也氏と福留孝介氏とが担当した。チェンジやピッチャー交代の際には日本のスタジオでのトークもあった。CMも入るが、民放ほどではなかった。解説は若干ユルユルだったが、クオリティーはテレビ放送と遜色ないと感じた。

 Amazon プライムビデオは、月額500円でAmazonプライム会員に加入すると視聴できるサービスだ。宮崎のような首都圏や大都市から離れているところでは、Amazonプライムの「送料無料」はかなりお得感がある。加入している人も多いだろう。ご存じのようにAmazonにはFireTV Stickなどの機器もある。従って電波でのテレビ放送はなくても、Amazon プライムビデオ経由でテレビ視聴した人も相当いたと思われる。

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