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freee初の書店「透明書店」を見てきた “副店長”はクラゲに扮したChatGPT(2/3 ページ)

» 2023年04月20日 17時30分 公開
[山川晶之ITmedia]

“副店長”はクラゲに扮したChatGPT

 オペレーションは基本的に店長1人のみだが、透明書店のマスコットでもあるクラゲ姿に扮したChatGPTが“副店長”として存在する。接客もでき、在庫DBと照合しながら来店客におすすめの書籍を案内してくれる。クラゲには声で入力することもできるが、マウスとキーボードもあるので無言で会話もできる。

クラゲの“副店長”はChatGPTが搭載されており、在庫管理DBからおすすめの本を紹介したり、日次の売上を教えてくれたりする

 クラゲは、ChatGPT APIを通してfreeeが持つ在庫管理DBに接続しており、聞けば来店客にも日次の売上を教えてくれる。クラゲの右上には円グラフが表示されており、店舗の売上目標が常に表示されている。目標を超えていればクラゲは元気に飛び跳ね、低ければうなだれるように沈む。「クラゲを元気にするために本を買う」なんて消費行動が起こるかもしれない。

右上に見える数字は売上目標。写真のように220%など大幅達成していれば飛び跳ねて喜ぶが、低いとうなだれるように横たわる

 クラゲは副店長として、経営面のアドバイスもしてくれる。今はChatGPTにありがちな「イベントをしてみましょう」などの一般的な施策を答えてくれるが、より高度な経営サポートを実現すべく、会計、販売管理、経費精算、人事労務、請求管理、債権債務管理など各プロダクトと連携し、経営状況を分析・改善するfreee独自のAIを開発予定。これをChatGPTと接続することで、自然な会話で経営をサポートする「人工知能CFO」の構築を目指す。実現すれば、freeeユーザーのスモールビジネスをサポートする存在にもなるだろう。

ChatGPTと経営データ/分析をもとに自然な会話でスモールビジネスをサポートする「人工知能CFO」構想

 透明書店は、無形ビジネスが基本のIT企業であるfreeeが、商品点数も多い有形ビジネスの象徴でもある書店を経営することで、スモールビジネスへの理解を図ることが狙いであり、店舗拡大などの予定はないという。ただし、スモールビジネスとして維持していくために、キャッシュフローの健全化、黒字運営を目指す。

 開店時間は平日が正午から午後8時、休日は午前11時から午後7時までで、間に店長の1時間休憩を挟む。“副店長”による無人営業も検討している他、透明書店から発送する形でネット書店への展開も探るなど、オペレーションの状況を見ながらではあるが、売上機会の最大化を図るという。「家賃が月30万円、人件費込みで固定費が月80万円。本は粗利20〜30%で売上80万円を生むには1日100冊売らないといけない」と、同社創業者の岡田悠氏は語る。

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