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ARはどこまで現実に溶け込める? ポケモンGOのNianticが手がけたペット育成ゲーム「ペリドット」の挑戦(1/2 ページ)

» 2023年04月25日 20時31分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 ARは、どこまで現実世界の風景に溶け込めるのか──「Ingress」や「Pokemon GO」といったAR位置情報ゲームで知られる米Nianticが5月9日から配信する「Peridot」(ペリドット)は、現時点でその答えに最も近いスマートフォンゲームかもしれない。

卵から生まれたばかりのペリドット(通称:ドット)

 NianticのUXデザイナー、篠原大河さんによると、ペリドットは「2000年代に流行ったペットゲームを最新のAIやARの技術を使って作ったらどうなるか」という発想で開発したゲームという。ユーザーは「ペリドット・キーパー友の会」の一員となり、数千年の眠りから覚めた不思議な生き物「ペリドット」(愛称:ドット)を絶滅の危機から救うため、育てて繁殖させるという内容だ。

 見どころはドットたちの「実在感のある」動き。例えば手頃な段差があれば上り、地面が砂だったら前足で掘り始める。周囲に砂が飛び散る描写もある。スマホカメラが映した周囲の環境を把握してドットは動く。

台の上にのったドット
砂を掘ってアイテムを探すドット(写真=右)

 実在する物に隠れることもある。例えばドットの手前を人が通ればドットの姿は見えなくなり、散歩では曲がり角の向こうにドットが消える。もっとも居場所が分からないとゲームに支障が出るため、障害物の上に影を表示する仕組み。これはオクルージョン(手前にある現実の物体にバーチャルキャラクターが隠れる表現)と呼ばれる技術だ。

人の足の間から顔を出すドット。隠れた部分は影になっている
カメラの前に手を出すとドットは隠れ影だけになった

 これらの処理を実現するにはスマホカメラで撮影した映像から地面など周囲にあるものを認識し、キャラクターを正しい奥行きに配置する必要がある。ペリドットはスマートフォンのLiDAR(レーザーで距離を測るセンサー)を活用して位置関係を把握する。

 またLiDAR非搭載の機種でもリアルタイムマッピングと呼ばれる技術を使って同様のことが行える。同社アートシニアマネジャーのディビッド・ホーリンさんによると「LiDAR搭載のスマホが普及する前から研究を続けてきた成果」という。

 ただしデバイスによってユーザー体験は異なるかもしれない。ペリドットは基本的にローカル処理のため、スマートフォンの処理能力やLiDARの有無によってARのクオリティーに差が出る可能性がある。

Nianticが21年に公開したリアルタイムマッピングのデモ動画
米NianticのUXデザイナー、篠原大河さん(写真=左)とアート シニアマネージャーのディビッド・ホーリンさん(写真=右)

「環境のAR」にも期待

 もう1つの見どころは「環境のAR」だ。

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