今回も米OpenAIが開発したチャットAI「ChatGPT」について考えてみよう。あまりの高性能ぶりから、日本の大手企業や公的機関でも活用、あるいは導入検討が始まっており、「私の会社でも話が進んでいる」という方が少なくないのではないだろうか。
一方で生成AIの開発・運用は、自社でモデル構築から行うAIアプリケーションの場合と大きく異なるため、従来とは違うタイプのリスクへの注意喚起が行われるようになっている。その一つが、生成AIの出力結果によって、第三者の著作権を侵害してしまうというリスクだ。
これにはいくつかパターンがあり、例えば「著作物を例にして似たものを生成させる」「ストックフォトを購入するのが嫌で、そのサンプルを生成AIにアップロードして似た絵を描かせる」「特定のコンテンツを念頭に置いて、それに近いコンテンツを生成するよう指示する」「具体的な画像をアップロードしないものの、構図や色彩など細かく指示を出して実在の画像に近づける」といった可能性が指摘されている。
中でも懸念されているのが、「生成AIの訓練データに著作物が含まれていて、出力の際、オリジナルに近い形のコンテンツが生成される」というものだ。
このケースに関連して、実際に1月、米国で訴訟が起きている。これはいわゆる「お絵描きAI」を対象にしたもので、アーティストら3人が原告となり、生成AIの開発・運用に携わる英Stability AIと米Midjourney、さらにアート投稿サイト・コミュニティーを運営する米deviantARTを訴えている。
彼らはこの訴訟に関連して立ち上げたサイトの中で、お絵描きAIを「21世紀のコラージュツール」と呼び、それは「作品を訓練データとして使われた、数百万人のアーティストたちの著作物をリミックスするものだ」と主張している。
原告の1人であるイラストレーターのサラ・アンダーセンさんは、ニューヨークタイムズ紙に寄稿した記事の中で実際のサンプルを掲載している。その中の「自分の名前をプロンプトとしてAIに生成させた画像」を見ると、確かに彼女の作風とよく似た結果が出力されているのが分かる。
こうした懸念は、画像や音楽を生成するAIにおいて特に強く示されているものだが、ChatGPTを始めとするテキスト生成のAIも無関係というわけではない。
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