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あらためて「NAB 2023」を振り返る 見えてきた「IP当たり前」の時代小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(1/3 ページ)

» 2023年05月31日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 例年4月に米国ラスベガスで開催される世界最大規模の放送機材展、「NAB Show」が2023年も開催された。20年、21年と中止になっていたが、22年より対面展示を再開。今回の展示で、100周年を迎えたという。

100周年を迎えた「NAB Show」

 一時は10万人に届く来場者数を誇った巨大ビジネスショーだが、2023年は登録者ベースで約6万5000人であったという。2022年が5万人強であったことから考えれば、だいぶ戻しているとはいえるが、日本からの出展者や来場者はかなり少なかったようだ。

 筆者もコロナ禍直前の19年までは毎年取材に行ったが、それ以降はそもそも海外取材に出掛けていない。コロナ禍で出入国のレギュレーションが面倒になったことや、円安で取材コストが爆上がりしたことが原因である。そんなわけで今年も、オンライン取材で情報をかき集めているところだ。

 以前ならほとんどのメーカーがこのNABでの発表を目指して開発スケジュールを立てていたものだが、最近国内メーカーはあまりNABを発表の場にしなくなってきた。その理由の1つは、年に一度の露出タイミングを狙うのではなく、量産体制になったら発表してすぐ発売というスピード感のほうが、市場のイノベーションを喚起しやすいと考えるようになってきたことだろう。

 もう1つは、メーカーのネット上の発信力が強くなり、「展示会」という場でなくてもよくなったこともある。競合他社と比較されるより、自分たちのフィールドで存分にアピールしたほうがよいという考え方だ。

 ただメディアとしては、そうした動きが加速すると、業界のトレンド、いわゆる「ウェーブ」が観測しづらいという側面がでてくる。新技術や新トレンドが生まれてくるタイミングでは、特にその芽が分かりづらい。

 今年のNABで言えば、「AI」がそれに当たる。ネットには毎日毎日ChatGPTや画像生成AIの新トレンドが生まれているが、NABではそのような動きは観測できなかった。ソフトウェアベースなら、AdobeやBlackMagic Designの編集ツールでAIを大々的にフィーチャーしたが、AIを使って新サービスを展開しようとするベンチャーにとって、NAB出展は視野に入っていないということだろう。

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