PTZカメラとは、遠隔制御でパン・チルト・ズームが可能な固定カメラである。製品自体はすでに10数年前から存在するが、当初は画質や小型化の問題から、監視カメラとして使われてきた。当時はコントロールはイーサネットだが、映像信号自体はアナログやSDIで伝送していた。
これが映像コンテンツに使われ始めたのは、NewTekのNDIが台頭してきた時期と重なる。2017年頃からNDIで制御と映像伝送ができるPTZカメラが登場したのに加え、監視カメラで最大のシェアを誇るパナソニックのPTZカメラがアップグレード等でNDI対応を始めたことで、潮目が変わった。
これまでもサブカメラとしてPTZカメラの需要はあったが、コロナ禍となり、現場に人が常駐できない、省人化したい、リモートで制御したい、自動追尾したいといったニーズが爆発し、メインカメラとして利用できないかというところまで来たのが昨年から今年、という流れである。
パナソニックが今年のNABで初展示したのが、屋外対応4Kインテグレーテッドカメラ「AW-UR100」である。また光学式画揺れ補正(O.I.S.)、電子式ROLL補正(E.I.S.)、パンチルト式画揺れ補正(D.I.S.S.:Dynamic Image Stabilizing System)の3つの揺れ補正を組み合わせた強力なブレ補正を備えており、豪雪や台風など、屋外の過酷な現場でも使用できる堅牢性がポイントだ。
キヤノンでは、22年12月に発売された屋内型4Kリモートカメラの最上位モデル「CR-N700」にインストールする有償アプリケーション2つを、4月中旬より発売する。「自動追尾」は指定した人物を自動追尾する。従来のようにコントローラー側の画像解析によって動くのではなく、カメラ内で画像解析までやってしまうので、より追従性の高い追尾が可能としている。
「自動ループ」は指定したパン・チルト・ズーム動作を繰り返し自動で行なうものだ。ポイントは、開始・停止時の加減速が調整できるところで、カメラマンが従来手動で行なってきたカメラワークを再現できるという。
どちらのアプリケーションも、人間のカメラマンの動作を再現するものではあるが、プログラムによる動作は人間には不可能な俊敏な動きや、逆にものすごくゆっくりした動きも可能になる。どうやって撮ってるんだ? という映像の例が、今後出てくるだろう。
三脚でおなじみのLibecは、NAB2023にてかねてより開発してきたPTZカメラ専用電動三脚「LX-ePed」の最終仕様モデルを公開した。カメラ側のPTZの動きに加えて、400mmの上下の動きを追加できる。
標準はグランドスプレッダだが、「LX-ePed Studio」はドリータイプとなっている。最大同載重量は10kgあるので、かなり重いカメラも乗せられる。
PTZカメラは、固定カメラだが遠隔からちょっと画角が変えられるもの、という利用方法だったが、もっと動く部分を積極的に使っていこうという発想に変わってきている。操作する人も、カメラマンからカメラオペレーターに変わりつつある。もともとワイヤーカムなどのオペレーションは専門職だったが、ああいうイメージに近くなっていくだろう。
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