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“ボロボロ”の国内スマホメーカー ここまで弱体化してしまった「4つの理由」とは(2/4 ページ)

» 2023年06月01日 19時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

日本メーカーに襲いかかる“四重苦”とは

 わずか1カ月のうちに国内メーカー3社が撤退・破綻するというのはかなりの異常事態といえるが、なぜ各社がそのような状況に追い込まれたのだろうか。

そもそも日本のスマートフォン市場は、スマートフォン普及期に携帯大手3社によるiPhoneの値引き合戦が激化して一時はiPhoneが最も安く買えるスマートフォンとなったこと、それを機としてiOSのエコシステムに多くの人が取り込まれ継続的にiPhoneに買い替えるようになったことで、アップルが圧倒的なシェアを獲得。それ以外のメーカーには非常に厳しい環境となっていた。

 だがそれでも従来は、アップル以外のメーカー同士で残りのシェアを分け合い、事業を継続することができていた。それがなぜできなくなったのかといえば、2023年、さらにいえば2022年半ばごろから、国内のスマートフォン市場が“四重苦”というべき状況に陥っていることが見えてくる。

 順を追って説明すると、1つ目はスマートフォンの進化停滞と市場の飽和である。2008年に日本でアップルの「iPhone 3G」が販売されてからすでに15年近い年月が経っており、スマートフォン自体の進化も停滞傾向にある。それゆえ最新機種に買い替えても大きな進化が見られないことから買い替えサイクルも長期化しており、スマートフォンの販売が伸び悩んでいるのだ。

FCNTはarrows N F-51Cで、最大3回のOS更新と最長4年のセキュリティパッチ適用をアピールしていたが、それもスマートフォンの買い替えサイクルが長期化していることを意識したものだといえる

 そして市場の飽和は日本などの先進国だけでなく、これまで市場の伸びを支えてきた中国などでも急速に広がっている。それゆえ中国市場を基盤として低価格モデルを主体に急成長を遂げたOPPOやXiaomiなどの中国新興メーカーも、最近では販売が伸び悩み苦戦を強いられているのだ。

 2つ目は国内特有の事情である。具体的には政府によるスマートフォンの値引き規制だ。2014年ごろまで非常に過熱していた携帯各社のスマートフォンの大幅値引き販売合戦に業を煮やした総務省が、通信サービスの契約とセットで端末を大幅値引きする従来の販売手法を問題視。結果として2019年の電気通信事業法の改正により、通信契約と端末の販売を明確に分離することが義務付けられるに至った。

 それに加えて、通信契約にひも付く端末の値引きも税別で2万円に制限され、スマートフォンの値引きは現状非常に困難な状況にある。最近になって誰でもスマートフォンを安く買えるよう大幅値引きすることで、「一括1円」などの価格を実現する手法が編み出されたが、これに関しても現在総務省で議論が進められ、2023年中にも規制されるものと見られている。

 この値引き規制が直撃したのが値段の高いハイエンドモデルで、一連の法規制以降、10万円を超えるモデルの販売が急減。ハイエンドモデルはメーカーにとっても利益が大きいだけに、その販売が落ち込み利益が少ないミドル・ローエンドモデルの販売が増えていることは、各社の業績を落ち込ませる大きな要因となっている。

FCNTの「arrows We」は2万円台という低価格でヒットを記録したが、低価格端末は利幅が薄く、販売数は伸びるが業績への貢献度合いは小さい

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