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“ボロボロ”の国内スマホメーカー ここまで弱体化してしまった「4つの理由」とは(1/4 ページ)

» 2023年06月01日 19時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 2023年5月、バルミューダと京セラが相次いで個人向けスマートフォン事業からの撤退を発表し、FCNTが民事再生法を申請するなど、国内スマートフォンメーカーの撤退・破綻が相次いだ。一連の出来事に大きく影響しているのは国内スマートフォン市場を取り巻く“四重苦”というべき現状であり、今後も国内外問わず、スマートフォンメーカーの撤退・縮小が続く可能性がある。

バルミューダと京セラは撤退、FCNTは経営破綻

 夏商戦を控え、メーカー各社からスマートフォン新機種が相次いで発表されている2023年5月。だがその一方で、スマートフォン市場に激震をもたらす出来事も相次いでいる。

 口火を切ったのは家電メーカーのバルミューダだ。同社は2021年に「BALMUDA Phone」でスマートフォン市場へ参入、バルミューダらしい強いこだわりを盛り込んだことで注目された一方、それゆえにコストがかさみ性能と価格のバランスを大きく欠いたことで多くの批判にさらされることにもなった。

2021年に「BALMUDA Phone」でスマートフォンに参入したバルミューダ。だがそれから2年足らずで撤退という判断に至っている

 それだけに同社も新モデルの開発には意欲的に取り組んでいたようだが、2023年5月12日に突如スマートフォン事業からの撤退を表明。参入からわずか2年足らずでの撤退とあって驚きをもたらした一方、参入から日が浅く、傷が浅いうちの撤退として妥当との見方も少なからずなされていた。

 だがバルミューダの撤退は、国内メーカー撤退・破綻ドミノの序章に過ぎなかった。その4日後となる2023年5月16日には、高耐久スマートフォン「TORQUE」シリーズで知られる老舗のスマートフォンメーカーの京セラが、コンシューマー向けスマートフォン事業の終息を表明。高耐久端末やIoT向けなどの法人向け端末事業は継続するというが、同社の通信事業はスマートフォンなどの端末事業から、企業向けのソリューションやインフラ事業へと主軸を移すことが明らかにされている。

タフネススマートフォンの「TORQUE」シリーズで知られる京セラも、コンシューマー向けスマートフォン事業から撤退を表明。今後は法人向けに特化して端末事業を継続するとしている

 そしてより一層、大きな驚きをもたらしたのが2023年5月30日。やはり国内メーカー大手の一角を占めるFCNTが民事再生手続きの申し立てをすると発表し、事実上経営破綻したことが明らかになったのである。各種調査会社の情報によると、民事再生法の申請をしたFCNTら3社の負債総額は1431億600万円とされており、規模の大きさにも驚かされるのだが、同社の生い立ちを考えると携帯電話業界に与えた衝撃は一層大きなものだったといえる。

 なぜならFCNTの前身は富士通の携帯電話事業だからだ。2016年に富士通から分離して設立された後、ファンドに株式が譲渡され現在は独立系のメーカーとなっているが、富士通時代から考えれば30年近く携帯電話やスマートフォンを開発してきた老舗中の老舗なのである。

 しかも同社は「らくらくホン」「らくらくスマートフォン」などシニア向け端末の定番というべき商品も持っており、長年安定した端末開発を続けてきたことでも知られていた。それだけに、同社の経営破綻が非常に大きな驚きを与えたことは間違いない。

FCNTは2023年2月、NTTドコモに新環境への配慮に重点を置いた機種「arrows N F-51C」を供給したばかり。それだけに同社の経営破綻は大きな驚きがあった
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