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“ボロボロ”の国内スマホメーカー ここまで弱体化してしまった「4つの理由」とは(3/4 ページ)

» 2023年06月01日 19時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

さらに追い打ちをかけた2つの“苦”とは

 これら2つの“苦”によって、日本市場は以前から国内メーカーにとって厳しい環境となっていたのだが、そこに突如2つの“苦”が加わったことが、3社を撤退・破綻に追い込んでいる。その1つが半導体の高騰だ。

 コロナ禍に入って以降、複数の要因から深刻な半導体不足が起き、価格が高騰するなどしてその影響がIT製品だけでなく給湯器など身近な機器にまで及んだことは覚えている人も多いだろう。その後半導体不足は解消されてきている一方、価格高騰はまだ収まっていない。それゆえ国内メーカーのように、市場シェアが小さく半導体の調達力が弱い、ボリュームディスカウントが働きにくいメーカーほど、価格高騰の影響を強く受け苦戦している状況にある。

 そしてもう1つは、ロシアによるウクライナ侵攻や、米国でのインフレなどによって2022年の半ば頃から急速に進んだ円安だ。半導体などの調達にはドルを使うことが多いことから、円安が日本メーカーに不利に働きやすいのに加え、スマートフォンは海外で製造して国内に輸入して販売することが多いので、円安によりスマートフォン自体の価格が高騰、販売を一層落ち込ませる要因となっているのだ。

 実際2022年には、円安の影響からアップルがiPhoneを突如値上げしたことが多くの人を落胆させたが、2023年に入ると各社が投入するハイエンドモデルが軒並み20万円、あるいはそれを超える価格を記録するなど、もはや一般消費者が購入するのが困難なレベルにまで高騰してしまっている。

サムスン電子の2023年のフラグシップモデル「Galaxy S23 Ultra」は最上位の1TBモデルも日本市場に投入されたが、KDDI(au)での販売価格は25万円を超えている

 そしてバルミューダやFCNTの発表内容を見ると、撤退・破綻に至った直接的な理由としていずれも半導体の高騰と円安を挙げている。市場成熟と端末値引き規制で市場が冷え込んでいた所に、突如半導体高騰と円安が直撃したことで、規模が小さい国内メーカー3社がギブアップしたというのが正直な所であろう。

海外メーカーが日本市場から撤退する日も……?

 ただこれらの“四重苦”は3社に限ったものではなく、国内メーカーだけでなく海外メーカーも苦しめている。そのことを象徴しているのがXiaomiの動向だ。

 日本市場で後発のXiaomiは市場での存在感を高めるべく、2019年の参入以降コストパフォーマンスの高いスマートフォンを積極投入。2022年の前半にはソフトバンクからも販売された「Redmi Note 10T」や、日本初の「POCO」ブランドの端末「POCO F4 GT」などスマートフォンを相次いで投入したのに加え、後半にもソフトバンクから「神ジューデン」をうたう「Xiaomi 12T」が販売されるなどして注目を集めていた。

Xiaomiは2022年、ソフトバンクから販売された「Xiaomi 12T」をはじめ多くの機種を投入し攻めの姿勢を見せたが、2023年は一転して、5月までに1機種しか投入していない

 だが2023年に入るとその状況が一転、執筆時点(5月31日)までに同社が日本で投入したのはローエンドの「Redmi 12C」のみで、価格は安いがパフォーマンスには疑問の声が挙がっていた。端末値引き規制を機として日本市場に参入したXiaomiだが、その値引き規制にハイエンドモデルの販売が阻まれているのに加え、円安で強みとしていたコストパフォーマンスも発揮できなくなるなど、苦しい状況にあると見て取れる。

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