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”ChatGPT時代”初の夏休み どうする学校のAI対策 保護者から見た文科省「AIガイドライン」の中身小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年07月13日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 大人にとっては計画の相談相手やプログラミング、単純作業の補助など、AIの活用が始まっている。現在AIにNOを突き付けているのはコンテンツ業界で、それはそうだろうと思う。

 一方子供の教育にAIが活用できるのではないかとして、さまざまなところで検討や勉強会が行なわれているところだが、一方で懸念や慎重論を示す人も少なくない。とはいえ、子供たちが今後出て行く社会は確実に「AIありき」になっているわけで、学校にいる間にAIを学んでおくべきというのは、悪い考えではない。

 こうした中、文部科学省が学校教育におけるAIの利用に関して、ガイドラインを発表した。6月末ごろには新聞報道で、夏休み前には出るのではないかと予想されていたが、7月4日という、割と早い段階で出てきたことになる。

 6月末に新聞報道があった段階では、夏休み中の利用についてフォーカスされていたため、おそらく当面利用を禁止する方向で出されるのではないかと懸念していた。だがこのガイドラインは「一律に禁止や義務付けを行なう性質のものではない」と明言されており、今後も「機動的に改訂を行なう」とされている。つまり利用するならこのような点に留意せよという内容になっており、細かいことは学校に丸投げになっておらず、全体的に好意的に見られるものであった。

 教育とAIの関係については、筆者と西田宗千佳氏とで共同発行しているメールマガジンの中で検討を続けてきたところではあるが、公の場で意見を述べるのは初めてとなる。今回は文科省のAI利用暫定ガイドラインの中身を、保護者目線で検討してみたい。

授業でどのように教えていくか

 ガイドラインの中では、パイロット的な取り組みとして、4つの段階に分けるとされている。(1)の「生成AI自体を学ぶ段階」(生成AIの仕組み、利便性・リスク、留意点)から始め、(2)の使い方、すなわちプロンプトエンジニアリングを学び、実際に利用していくのは(3)以降、という流れになっている。

パイロット的な取り組みの例

 こうした段階を踏むのは妥当性があるところだが、実際にはどの教科で、何単元ぐらいかければそこまで行けるのかは、まだ実践例がない。特に1は重要だが、AIの動作そのものを見たことがない子供たちもまだ大勢おり、先生が実例を示していくことになる。しかしそれにはまず先生に相当のAIに対する経験が必要である。好きな先生はどんどん試してはいるだろうが、最初はそうした先生がパイロット的に進めていく事になる。

 その一方で、AIを学習に取り入れるには何年生からが妥当か、という問題がある。それぞれの利用規約からすれば、ChatGPTは13歳以上で18歳未満は保護者の同意が必要となっている。Bingでは未成年は保護者の同意が必要、Bardは18歳以上とされている。

 小中高校生の教育を想定すると、Bardは選択肢から外れる。Bingは保護者の同意があれば何歳でもいいように見えるので、小学校では保護者の同意を得てBingを使うという事になるだろう。一方ChatGPTは中学生以上での利用が想定される。

 ただ個人的にAIを利用している感覚からすれば、どれか1つのAIサービスに頼るのは危険……とまでは言わないが、偏りがあるように思える。複数のAIに対して同じ質問を投げてみるといった比較利用が、AIの本質や特性を知る上で重要だろう。

 もう1つ、年齢的な成長という意味で言えば、AIの中に架空の人格を見いださないぐらいの年齢であることは必要であるように思える。つまりAIを「何でも知っている人」「間違いのない人」と思い込み、AIの指示する通りに行動してしまうような年齢には、使わせるのは難しいように思える。つまり上記のパイロット例のうち、(1)がクリアできない年齢では難しいという事になる。

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