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”ChatGPT時代”初の夏休み どうする学校のAI対策 保護者から見た文科省「AIガイドライン」の中身小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2023年07月13日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

どうなる? 夏休みの宿題

 このように学校においては段階的に取り組んで行くべきという方針が示されたとはいえ、実際に子供たちはGIGAスクール構想により1人1台のコンピュータを所有しており、家に帰ればスマホもある。スマートフォンが正しくペアレンタルコントロールされていれば、AIアプリ導入には保護者の同意が必要だが、ChatGPTのようにWeb上でアカウントを作るAIに関しては年齢確認も求められておらず、ブラウザさえあればChromebookでもアカウントが作れる。

 そして今年の夏休みまで、実質あと1週間なのである。それまでに(1)〜(2)の教育が全国でできるかといえば、まだ全然そんなレベルにはない。そして子供たちは、AIに自分たちの宿題である自由研究や読書感想文をやらせる事になる。

 これに関してガイドラインでは、特にページを裂いて留意事項を上げている。

長期休業中の課題等について

 (1)に関しては、もうAIを使ってしまうことは止められない前提で、それを外部のコンクール等へ提出するのは不正行為に当たると生徒に周知するよう求めている。

 すでに写真の世界では、国際的写真コンテストでAI画像が優勝するという事件が起こっている。また米国のグラミー賞では、受賞は人間のクリエイターのみという方針を打ち出している。

 ただ、AIで作られたかどうかを見破る術はない。全て本人の申告に頼るのみだ。AIによるコンテンツ生成は、子供が応募する作文コンクールでも当然起こりうると考えるべきだろう。個人的には、AIによる生成なのかそうでないのかを見分ける術がない以上、もはやコンクールは機能しなくなったと考えるべきであろうと思っている。数年間、一定の議論や「事件」が出尽くすまで、こうした子供向けの作文コンクールは中止するか、学校単位で応募を見合わせるようにした方がいいのではないだろうか。

 (2)に関しては、先生にファクトチェックせよと求めているように読める。だがこれは大変な話だ。教科書に乗っている範囲ならともかく、多種多様な自由研究について、その全てを先生がファクトチェックするのは事実上不可能ではないか。それこそ「AIを使えば?」、という話になってしまうわけで、AIのファクトチェックにAIを使っても仕方がない。

 (3)については、AI丸写しなのか、自分のものになっているのかの判断として、発表させ、質疑応答に答えさせるという方法を示している。これは現代の学校教育が、設問に対して回答ができればよいという教育から、発表や表現と言ったパフォーマンスまで含めて評価する教育へと転換している流れに沿っている。

 究極的に言えば、途中経過がどうであれ、知識や能力が自分のものになっていればいいわけで、最終的にパフォーマンスで成果を見るというのは合理的である。

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