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動き出した「地デジ4K化」 技術的には行けそう、でも募る“ソレじゃない”感小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)

» 2023年07月21日 15時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 HDではインターレース方式は中止され、プログレッシブ方式のみとなる。色域については、SDRの場合は従来通りのBT.709と、広色域のBT.2020の両方があり得る。HDRではBT.2100となり、デフォルトで広色域となる。これに伴い、符号化信号形式は4:2:0/10bitとされている。

 4KについてはすでにBS等で実施されている方式と同等だが、4Kでも最高120Pまで定義された。

高度地上デジタルテレビジョン放送方式の映像入力フォーマット

 細かい話で恐縮だが、フレーム周波数に60や120などの整数値が規定されたところは興味深い。多くの人はテレビ放送は1秒間60フレームと習ったものと思われるが、正確には59.94フレーム(60/1.001)である。これは初回の東京オリンピックに向けてカラー放送が実施された際、モノクロ放送と両立させるためにほんの少しだけサブキャリア周波数をずらしたことが原因である。

 モノクロ放送終了時、アナログ放送終了時に整数値に戻せるチャンスはあったとは思うが、後方互換性のためにそのままにせざるを得なかったのだろう。だがもうアナログシステムとの互換性は不要になったということで、整数値と旧来フレームレート両方をこのタイミングで吸収しようとしているのかもしれない。

 ただベースバンドの同期信号によるシステムは、どちらかを採用しないと仕方がないとは思うのだが、どう整合性をとるのだろうか。

 またコーデックとしてはすべての解像度でH.266が想定されており、ビットレートとしてはHDで7Mbps、4Kで30Mbpsとなっている。ただ追加実験で、4K/60Pなら15Mbpsで行けると確認されている。

高度地上デジタルテレビジョン放送方式の符号化方式
高度地上デジタルテレビジョン放送方式の所要ビットレート

 音声については、サンプリング周波数48kHz/16bit(以上)とされており、ハイレゾ対応は見送った格好だ。その代わり最大56chが定義されており、いわゆる空間オーディオには対応する。コーデックにはMPEG-H 3DとAC-4が想定されている。

高度地上デジタルテレビジョン放送方式の音声入力フォーマット
高度地上デジタルテレビジョン放送方式の音声符号化方式

 新しいコーデックを使う事で、4Kを地上波で伝送できるビットレート内に収めるという話なわけである。ただ、現状の放送からどのように移行していくかという点が難しい。答申では、過渡期には従来の地上波放送の上に次世代方式を重畳(エンベデッド)することで、両方を放送する。現行の放送方式が不要になった段回で次世代方式に完全移行するというプロセスが提案されている。

移行中のLDM方式で対応

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