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SMSを送って相手の位置を特定するサイバー攻撃 スマホ持つ全ユーザーに到達可能 米研究者らが開発Innovative Tech

» 2023年08月07日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

Twitter: @shiropen2

 米ノースイースタン大学などに所属する研究者らが発表した論文「Freaky Leaky SMS: Extracting User Locations by Analyzing SMS Timings」は、SMS(Short Message Service)を送ることで相手のスマートフォンの位置を特定するサイドチャネル攻撃を提案した研究報告である。攻撃者は、ユーザーのスマートフォンに複数のテキストメッセージを送信する。ユーザーの自動配信の返信のタイミングによって、ユーザーの位置を三角測量で特定できる。

SMS位置特定攻撃の構成

 攻撃は、SMSの送信者がネットワークを介してSMSを送った後に、送信者に送り返されるSMSデリバリーレポートを利用して行われる。送信者はこれらのレポートを要求でき、受信者がそれを防ぐ方法はない。

 具体的な仕組みとしては、SMSを送信してから対応するデリバリーレポートを受信するまでの返答時間(ラウンドトリップタイム)を測定することで、ターゲットとなる受信者のさまざまなロケーションを識別し、トレーニングフェーズの後にそのロケーションエリアを決定できる。

2人のユーザー間の1回のSMS送信にかかる、さまざまな遅延。同様の遅延は発信者に送り返されるデリバリーレポートにも適用される

 トレーニングデータセットを作成するために、3大陸、9カ国、10事業者のデリバリーレポートのタイミング測定を収集する大規模なタスクを実施した。このタスクでは、デバイス間でSMSメッセージを送信し、複数の国、異なるセットアップ内およびセットアップ間で、デリバリーレポートの返答時間を測定した。

 収集した測定値を使用して、位置推測攻撃の性能を評価した。実験の結果、近隣の国では最大75%、遠くの国では最大96%の正確さで位置を特定できることを示した。また、ドイツやオランダ、ベルギーなどの国内あるいは特定の地域内では、多くの場合において70%以上の正確さを達成した。

 この攻撃は、スマートフォン端末を所有し、ネットワーク事業者に加入している全てのユーザーに到達可能である。これは、敵対者がターゲットのいつもの場所から測定値を収集するために被害者の電話番号のみを必要とするため、広範囲に影響を及ぼし、実用性が高い攻撃といえる。

 コードはGitHubで公開される予定。

Source and Image Credits: Bitsikas, Evangelos, Theodor Schnitzler, Christina Popper, and Aanjhan Ranganathan. “Freaky Leaky SMS: Extracting User Locations by Analyzing SMS Timings.” arXiv preprint arXiv:2306.07695(2023).



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