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VTuberの著作権は誰のもの? “中の人”と“ママ”が知っておきたい、アバターの権利関係弁護士が解説! VTuberの法律(1/2 ページ)

» 2023年08月28日 08時00分 公開
[前野孝太朗ITmedia]

 「バーチャルYouTuber」(VTuber)の勢いが止まらない。VTuber事務所を運営するANYCOLOR(東京都港区)やカバー(東京都中央区)などが上場し、右肩上がりの業績を上げる他、個人でもVTuberとして配信を行う人も多くいる。そんな人気なVTuberだが、アバターの著作権について正しい取り扱いを知っているだろうか。

 多くのVTuberは、そのアバターを作った「VTuberのママ」(イラストレーター)と、それを使って配信する「VTuberの中の人」(演者)がそれぞれ存在する。ではもしも、悪意を持った第三者がVTuberのアバターを勝手にグッズ化して販売した場合、誰がどのような対応をすべきだろうか?

VTuberのアバターの著作権は誰のもの?

 シティライツ法律事務所(東京都渋谷区)に所属し、IT法務やゲーム・ネットコンテンツなどのエンターテインメント領域の法務に詳しい、前野孝太朗弁護士は「この問題はかなり根深い」と話す。そこでこの連載では複数回に分けて、前野弁護士がVTuberの法務を解説する。第1回のテーマは、VTuberの顔であり、身体でもある「アバターの著作権」についての考え方だ。以降の段落から前野弁護士の文章。

「アバターの著作権」は誰のもの? 弁護士が解説

 まずは著作権という権利について、簡単に説明します。著作物を創作した者(著作者)は「著作権」と「著作者人格権」という権利を得ます。この著作権と著作者人格権は、いわば権利の束であり、さまざまな権利をまとめているものです。

 例えば、著作権を持つ人は、複製権(著作物をコピーする権利)を専有します。そのため、他者は著作権者の許諾なく著作物を複製できません。今回は著作権の説明は本題ではないため詳細な説明は控えますが、著作権制度に関してもっと詳しく知りたい方は文化庁の「令和5年度著作権テキスト」などを確認してみてください。

 VTuberのアバターに使われるイラストや3Dモデルは通常、著作物であるため著作者に著作権と著作者人格権が発生します。イラストや3Dモデルの著作者は、基本的にはそのイラストや3Dモデルのクリエイターになるため、何も合意がない状態ではクリエイターがアバターの著作権を持つことになります(法人の使用者が業務として行った場合や、複数人で作成した場合などは個別に検討が必要になります)。

 VTuber活動では、アバターの著作権の取り扱いは重要なポイントになります(著作者人格権の取り扱いも別途検討する必要がありますが、今回は省略します)。個人のVTuberは、第三者のクリエイターにアバターの作成を依頼することが多いと思われますが、VTuberがアバターを利用する方法は大きく分けて「著作権の譲渡を受ける」「利用許諾を受ける」の2つが挙げられます。

 著作権の譲渡を受ける場合の考え方はシンプルで、アバターの著作権を譲り受けることで、複製権などの全ての権利を入手する方法です。当然ながら、VTuberはアバターを自由に利用できます。

 利用許諾を受ける場合は、著作権をクリエイターに残しつつ、クリエイターとVTuberとの合意により「●●の範囲で利用して良い」という許諾を得る方法です。VTuberは許諾を受けた範囲で、アバターを利用可能になります。

 特に個人間でアバター作成を依頼する場合、この2つが曖昧になっていることが多いですが、法的には大きな違いがあります。利用許諾を受ける場合、VTuberは「クリエイターが許諾した範囲でのみ利用できる」ことになります。また、VTuberはアバターの著作権を持っていないため、第三者が著作権を侵害している場合、その侵害を止めるよう請求することができません。

 特に、後者は重要な問題です。例えば、悪い第三者が「VTuberのアバターを勝手にグッズ化して販売している」としても、利用許諾を受ける場合、VTuberは第三者に侵害を止めるよう請求することができないため、クリエイターから第三者に対して請求してもらう必要があります。つまり、VTuberの活動の観点からのみならば、著作権譲渡を受けた方が好ましいということになります。

 一方、クリエイター側は自分の作品の著作権を譲渡すること(特に見ず知らずの依頼者への譲渡)には、かなりの心理的抵抗があると思います。また、著作権を譲渡するということは、VTuberがイラストや3Dモデルを好き勝手に改変できることになりますが「そこまで許容したくない」という人も多いでしょう。

 また、著作権を譲渡してしまうと、クリエイターが類似したイラストや3Dモデルを今後作成しづらくなるなどの問題もあります。そのためクリエイターとしては、利用許諾を受ける方法を前提としている方が多いと思われます。

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