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買えないSuicaカード、広がる「クレカのタッチ乗車」 Suicaの未来はどうなる?(2/5 ページ)

» 2023年08月29日 14時00分 公開

Suicaが販売中止となった根本原因

 過去にさまざまな報道やJR東日本が公式見解で述べているように、Suicaなど交通系ICカードで使われる半導体チップの供給不足により、新たにカードが製造できないことが原因ではあるものの、正直なところ真相は不明。ここから先は、あくまで半導体業界の一般的な話を前提に、筆者の考察として認識してほしい。

 製造工場への委託作業ではよくある話だが、製品の製造にあたって契約金を支払い、製造に必要なラインを一定期間押さえて規定数を納品してもらうというのが一連の流れだ。SuicaやPASMOなど、今回問題となっている交通系ICカードの半導体チップもまた、このような形で半導体製造工場に委託して必要数を納品してもらう形となる。

 ただ現在、さまざまな理由から半導体製造の需要に対する充分な供給が行われておらず、いわゆる「半導体不足」という現象が起きている。すべての半導体ではないものの、特定のニーズを満たす半導体についてはこの事象に該当するケースが多く、著名どころでは最先端プロセスのロジック半導体を製造する台湾TSMCに注文が殺到し、ファブレス(自社製造工場を持たない)の半導体メーカーの間で製造ラインの奪い合いが発生している。

 大金を積んでAppleがラインを優先確保し、ここから漏れた他のメーカーは出荷時期の遅れる低い優先順位を甘受するか、別の半導体製造工場に委託せざるを得ないケースが出るなどの状況が生まれている。

踊るSuicaペンギン

 おそらくは、Suicaに関しても似たような状況が起きているのではないかというのが今回の問題の背景だ。日本の交通系ICカードに使われている半導体チップは特に最先端プロセスを要求するものではないものの、FeliCaという規格自体が世界的にみれば特殊なものであり、その需要もほぼ日本からの発注に限られるため数が比較的少なく、委託先となる製造工場を複数に分けてリスクを回避するような体制になっていなかったと思われる。

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