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生成AIの自社ルールの作り方 米AP通信の例 「“何をさせないか”を明らかに」事例で学ぶAIガバナンス(2/3 ページ)

» 2023年09月01日 12時08分 公開
[小林啓倫ITmedia]

AP通信の「生成AIに関するガイダンス」

 AP通信のアマンダ・バレット副社長のブログ記事で発表されたこの基準は「生成AIを使用する際のガイダンス」と位置付けられ、次のような内容となっている(下記はその一部を翻訳・抜粋したもの、番号は筆者が設定)

アマンダ・バレット副社長のブログ記事

(1)AP通信はOpenAIとライセンス契約を結んでおり、AP通信のスタッフがChatGPTで実験することはあるが、配信可能なコンテンツを作成するために使用することはない。

(2)生成AIから出力されたものは、それがいかなるものであっても、未検証の情報元として扱われるべきである。AP通信のスタッフは、配信する情報を検討する際、編集上の判断とAP通信のソース基準を適用しなければならない。

(3)AP通信はその社内基準に従い、写真や映像、音声のいかなる要素も改変しない。従って、生成AIによる要素の追加や削除は許可しない。

(4)AP通信は、現実を正しく描写していないことが疑われる、またそうであることが証明されたAI生成画像の送信を控える。ただしAIが生成したイラストや芸術作品がニュースの題材となる場合は、キャプションにその旨を明記する限り、使用できる。

(5)AP通信はスタッフに対し、機密情報やセンシティブな情報を、AIツールに入れないよう強く要請する。

(6)またジャーナリストに対し、他の情報源からAP通信に送られてくる素材に対しても、AIが生成したコンテンツが含まれていないことを十分に注意するよう推奨する。

(7)生成AIは、誤った情報や偽情報を意図的に広めることを容易にする。そうしたコンテンツを不用意に利用しないために、ジャーナリストは、元のコンテンツのソースを特定したり、信頼できるメディアから似たような内容の報道がないかチェックしたりするなど、通常と同じような注意を払う必要がある。

 AP通信は通信社であり、当然ながら生成AIの用途についても、配信する記事を執筆することの支援が中心になると考えられる。発表されたガイダンスも、そのユースケースを前提とした内容に限定されたものだ。しかしそこで示されている注意事項は、他の業界の生成AIユーザーにとっても参考となるものだろう。

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