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生成AIの自社ルールの作り方 米AP通信の例 「“何をさせないか”を明らかに」事例で学ぶAIガバナンス(1/3 ページ)

» 2023年09月01日 12時08分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 生成AIの普及により、自らのビジネスにおいても、この新しい技術を活用しようとする企業が増えている。それに伴い、社内のユーザーに向け、自社独自のガイドラインやルールを制定する動きも見られるようになってきた。ではそうしたルールがどのような内容になっているのか。大手通信社の米AP通信の例を見てみよう。

OpenAIと最初に提携した報道機関

 1846年創設と長い歴史を持つAP通信だが、一方でテクノロジー活用にも積極的なことで知られ、AIを利用した記事の自動作成にも取り組んでいる。AP通信は7月、話題の生成AI「ChatGPT」の開発会社・米OpenAIとの提携を発表した。これによりAP通信は、主要な報道機関の中でOpenAIと提携した初の存在となった。

 AP通信のプレスリリースでは「ニュース製品やサービスにおける生成AIの潜在的ユースケースを検討するため、ニュースコンテンツと技術へのアクセスを共有することで合意に達した」とし「OpenAIはAP通信のテキストアーカイブの一部をライセンス供与され、AP通信はOpenAIの技術と製品に関する専門知識を活用することになる」と説明する。

AP通信のプレスリリース

 要するに、OpenAIはAP通信がこれまで蓄積してきた大量の記事データにアクセスできるようになり(それはAIモデルの学習データとして活用されるだろう)、AP通信はOpenAIが持つ、AIに関する高度な技術力を利用できるようになるというわけだ。

 先ほどAP通信が既にAI活用を進めていたことについて触れたが、それはこのプレスリリースの中でも解説されている。彼らは「10年近く前からAI技術を活用し、定型的な作業を自動化することで、ジャーナリストをより有意義な報道に専念できるようにしてきた」としている。

 具体的には、2014年に企業の決算報告の自動化を始め、その後一部のスポーツイベントについて記事を自動生成するようになった。また各種のライブイベント(記者会見など)の音声・映像コンテンツの書き起こしを支援するためにも、AI技術を活用しているそうだ。

 ただし生成AIで記事を作るという取り組みはまだ進めておらず、その使用基準について精査を行っている段階であると、7月の発表では述べられている。そしてつい先日、AP通信からこの「基準」に関する発表があった。

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