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インボイスで荷物届かなくなる? 競馬界にも激震 制度直前、高まる反対熱 「“消費税のネコババ”は誤解だ」(1/3 ページ)

» 2023年09月04日 20時42分 公開
[岡田有花ITmedia]

 消費税のインボイス制度のスタートが10月1日に迫る中、反対の声が熱を帯びている。「STOP!インボイス」を掲げ、制度の中止を求めるネット署名は9月4日までに36万筆を突破。同日、インボイスに反対する有志が、東京・霞ヶ関で記者会見を開き、財務省の担当者などに署名を手渡した。

画像 「インボイス制度を考えるフリーランスの会」が、財務省の担当者などに署名を手渡す様子。後ろでカードを掲げるのは、インボイスに反対する一般市民

 1人のライターが草の根で始めた反対運動だが、その声はさまざまな業界に伝ぱ。記者会見には、声優や配送ドライバー、建設業界、農業、競馬、経理など幅広い業種の人々が参加した他、制度に反対する超党派議員連合の議員10人以上が参加して反対を訴えた。一般参加者も350人ほど集まり、会場は熱気に包まれた。

 「インボイス反対と言うと、益税だ、ネコババだと批判されるなど誤解も多いし偏見も受ける」――「STOP!インボイス」を掲げる有志団体・インボイス制度を考えるフリーランスの会発起人で、ライターの小泉なつみさんは言う。

 「制度開始直前に騒いでも仕方が無いという声があるが、おかしいと思ったらいつでも誰でも声をあげていいと思う。決まっている法律でも、納得できないなら自分たちの声で変える。決まったことだから仕方がないという、諦めと冷笑を変えたい」(小泉さん)

【訂正:2023年9月5日午前7時半 一般参加者数を修正しました】

インボイスは「地獄の選択」か 政府は「負担軽減」掲げるが……

 インボイスは、消費税を「誰が」「いくら」支払ったかを明確にし、国が漏れなく把握・徴収するための制度だ。「売上にかかる消費税」から「仕入で払った消費税」を差し引きした額を、正確に記録・納税させるべく、各事業者に「インボイス番号」が割り振られ、領収書(インボイス)にその番号と税額などを明記する。財務省はこの制度により国の税収が約2500億円増えると試算している。

 事業者は、インボイス番号のチェックや、本則/簡易課税など税額の確認といった事務負担が増える。また、売上規模が1000万円以下の「免税事業者」はこれまで、消費税納税を免除されていたが、(1)新たにインボイス事業者(課税事業者)になって消費税を支払うか、(2)取引先に税負担を肩代わりしてもらう代わりに、取引を縮小されるリスクを受け入れるか――という選択を迫られる。

 免税事業者にとって、両者とも「地獄の選択」(STOP!インボイスの緊急提言より)だ。インボイスを機に廃業を考えると答えた事業者は、アニメ・マンガなどエンタメ業界で2〜3割、建設業界では1割に上るという。STOP!インボイスは「零細事業者の廃業につながる」などと反対運動を行い、ロビー活動も実施。インボイスに反対する超党派議連も結成され、反対の機運が盛り上がっている。

 反発を受けて政府は、「3年間に限って、納税額を売上税額の2割に軽減する措置」(2割特例)や、「1万円未満の経費についてインボイスを不要とする措置」などを「負担軽減」として打ち出したが、STOP!インボイスはあくまで、制度の中止、最低でも延期を求めている。

「ネコババ」「益税」は勘違い 「消費増税だ」と京大教授

 インボイスは「びっくりするぐらい勘違いされている」と、京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授は、記者会見で指摘する。キーワードは「益税」「ネコババ」だ。

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