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インボイスで荷物届かなくなる? 競馬界にも激震 制度直前、高まる反対熱 「“消費税のネコババ”は誤解だ」(2/3 ページ)

» 2023年09月04日 20時42分 公開
[岡田有花ITmedia]

 例えば、税込110円のジュースを買った時、一般的には「100円はジュースの価格」「10円が消費税で、売り手が“預かって”税務署に納める」と考えがちだ。売り手が免税事業者の場合、10円分も売り手が取ることになるので「益税」「ネコババ」と非難されることがある。

 「これはうそだと、財務省が国会で言っている」と藤井教授は指摘する。実際は「ジュースの価格が110円だという事実しかない。財務省は粗利の11分の1(約9.1%)を払うように言っているだけだ」

画像 京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授

 インボイス制度スタート後は、免税事業者の税率が0から9.1%に急増し、事業者自身または取引先、消費者が負担することになる。「つまりこれは、純然たる増税、消費増税なんです。この事実が知られていない。日本経済が苦しい状況で増税は行うべきではない」と藤井教授は考える。

 企業の経理業務担当者からの評判も悪い。インボイス制度を考えるフリーランスの会が経理担当者に行ったアンケート(回答数709)によると、「導入すべきではない」と回答した人が8割、「延期すべき」とあわせると9割近くいた。理由のトップは「事務負担が大きいから」だ。

 「インボイス導入で業務が増えたら異動したい/退職したい」と答えた人は3割に上り、「経理担当者の仕事に対するモチベーションを壊す制度だ」と、経理コンサルタントの堺剛さんは批判する。

画像 インボイス制度導入に対する経理担当者の考え

荷物が届かなくなる? 4割のドライバーが「廃業検討」

 「年間平均売上が500万円程度」という自営ドライバーにも影響は大きい。Amazonをはじめとした通販・宅配事業者から委託されて荷物を配送するドライバーで構成する「建交労軽貨物ユニオン」委員長の高橋英晴さんによると、「99.9%がインボイスで増税の可能性がある」という。

 ユニオンで行ったアンケート(回答66件)によると、インボイス導入により「2023年中に廃業するか、廃業を検討している」との回答が7.6%、「経過措置が終わる3年間の間に廃業または廃業を検討する」と答えた人が33.3%と、合わせて4割に上った。

 「軽貨物業界には、2024年問題(運転業務の時間外労働時間が960時間に制限されることで、ドライバーの収入減などが見込まれている)もある。ドライバーが廃業に追い込まれ、物流が滞れば、国民にしわ寄せが来る。ドライバー不足によって現職の負担は増えて未配達も増えるし、交通事故、労災事故が多発するだろう。本当に今やるべきなのか?」(高橋さん)

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