後を絶たないインターネット上での誹謗中傷。現代人であれば誰もがその被害に遭う可能性を抱えているが、顔出しをせず肉体を持たないバーチャルYouTuber(VTuber)にも、その矛先は向けられている。
VTuberのマネジメントを行う企業はこの問題に対して、法的措置を取るところも現れている。また、VTuber「兎田ぺこら」さんのグッズの製造していたイクリエ(東京都台東区)は9月、同グッズに対して誹謗中傷を書き込んだ人物に法的措置を検討。書き込んだ本人とその保護者から謝罪があり、示談が成立したと発表したことも話題になった。
一方、VTuberへの誹謗中傷に対する法的見解には、人間への誹謗中傷とは異なるポイントがあるという。それは「キャラクターは法的には、人ではない」ということだ。そこで今回は、VTuberの誹謗中傷における法的見解をシティライツ法律事務所(東京都渋谷区)の前野孝太朗弁護士に解説してもらう。以降の段落から前野弁護士の文章。
VTuberの人気に比例して、VTuberに対する誹謗中傷は残念ながら増えてきているように思います。そこで、今回は、VTuberに対する誹謗中傷について、法的に整理していきたいと思います。
なお、誹謗中傷に対する対応については、削除請求や刑事告訴も考えられますが、今回は、損害賠償請求を念頭に整理いたします。
まず、インターネット上での誹謗中傷の損害賠償請求について、簡単に整理しておきましょう。インターネット上で違法行為がなされた場合、(1)発信者情報開示請求による発信者の特定、(2)発信者に対する損害賠償請求、大きく分けてこの2つのステップで損害賠償請求を行います。
発信者の特定がされますと、直接の手紙や面談などでの交渉も可能になりますので、(2)については和解で解決することもあります。
(1)の発信者情報開示請求においては、発信者の行為による権利侵害が明らかであることを主張立証する必要があります。簡単にいいますと、VTuberへの誹謗中傷の場合、SNSや掲示板への投稿行為などが、権利を侵害したことを立証する必要があるということです。
「誹謗中傷が権利を侵害するのは当たり前じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ただ、VTuberに対する誹謗中傷には少し検討すべきポイントがあります。
誹謗中傷の場合、主に名誉権侵害や名誉感情侵害(侮辱)などが問題となります(名誉感情とは、簡単にいえば「プライド」です)。ただ、抽象的なキャラクターに対する誹謗中傷は、名誉権侵害や名誉感情侵害にはなりません。
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