自治体の業務を共通化し、システムもそれに沿ったものに移行する“自治体システム標準化”。国は原則として2026年3月末までの対応を自治体に求めており、各自治体への補助金として1825億円を確保している。中には期限に先行して移行する自治体も出ているが、一方でスケジュールや、補助金の不足による負担増といった問題を抱える自治体も少なくない。
例えば茨城県水戸市や福島県福島市など人口20万人以上の市町村の市長からなる中核市市長会は10月、全額国費による事業推進と期限の見直しを求める要望書を提出した他、京都市・横浜市などの市長からなる指定都市20市市長会も補助金の上限や対象となる経費の拡充などを求めている。
このうち補助金の上限については、11月10日に閣議決定した2023年度補正予算案で約5163億円の積み増しが決まった。デジタル庁の河野太郎大臣も「移行費用は全額負担するから安心してやってほしい」と呼び掛けている。一方でスケジュールについては、移行の難易度が高い場合のみ例外が認められたものの、原則は当初の想定通りの移行と定められている。
厳しいスケジュールと二転三転する状況を、現場はどう受け止めているのか。本連載ではさまざまな自治体の担当者に取材し、システム標準化に取り組む人の“生の声”を探る。第1回となる今回は、福島市の蛭田順一さん(政策調整部デジタル改革室情報企画課課長)と東海林(とうかいりん)貴志さん(同課システム管理係)に話を聞いた。
最初に、自治体システム標準化がどんな取り組みなのか整理する。自治体システム標準化とは、複数の民間事業者が一定の基準に沿った業務用アプリを政府が定める共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」上に開発し、自治体が状況に合わせて導入する取り組みを指す。
自治体は共通化されたクラウド基盤と業務用アプリを使うことになるため、既存業務の見直しが必要になる。共通化の対象として定められている業務は住民基本台帳、国民年金、介護保険の事務など20種類。なお、ガバメントクラウドの利用料はデジタル庁などではなく自治体が負担する。
11月14日時点でガバメントクラウドとして認められているのは、米Amazon Web Services、米Google、米Microsoft、米Oracleのサービス。いずれも外資系だが、報道各社からはさくらインターネット、ソフトバンク、IIJが2023年の公募に申し込んだと報じられており、今後拡大する可能性がある。
デジタル庁は一連の取り組みを通して、行政サービスの改善、自治体の人的・財政的な負担削減やベンダーロックインの解消を見込む。特に財政的負担については「標準化対象事務に関する情報システムの運用経費などについては、標準準拠システムへの移行完了後に、2018年度比で少なくとも3割の削減を目指す(総務省)としている。
ただし今回取材した福島市によれば、もし期限に間に合わなかった場合は、補助金が適用されない可能性もあるという。とはいえ、短期間に移行が集中すると、移行を支援する事業者を確保しにくくなる可能性も考えられる。デジタル庁も、同様の事情などで移行の難易度が高い場合、当初とは異なる期限を設定するとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR