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スケジュールに無理? 自治体システム標準化・ガバメントクラウドに取り組む現場のホンネ 福島市の場合ガバクラ・自治体システム標準化の行方(2/3 ページ)

» 2023年11月20日 10時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

福島市のシステム標準化、現場に聞いてみた 課題と現状は

 ──福島市のシステム標準化について、率直な進捗を教えてください

蛭田さん(以下、敬称略) コンサルタントなどを挟まず、業務アプリのパッケージを開発してもらっているベンダーと協力して進めており、現在は「移行計画」を作っている段階。既存業務と標準化した後のシステムとをすり合わせ、整合性を検討する作業「フィット&ギャップ」をしているのが2023年度の状況です。

総務省が提示する移行スケジュールの一例。必ずしもこの順番通りに進める必要はなく、状況に応じて各手順を並行して進めたり省略してもよいとしている

 ──2026年3月までのタイムリミットには間に合いそうでしょうか

蛭田 補助金のことも踏まえ「間に合わせるつもりで進めている」ところです。パッケージを開発してもらっているベンダーが、予定通り進捗すれば間に合うと考えています。ただ、スケジュールがタイトなので、もしパッケージが遅れればアプリの検証といった視点からも予定通りの移行が厳しくなるかもしれません。

 ──福島市では、どのくらいの規模の組織で標準化に取り組んでいるのでしょうか

蛭田 先に説明したフィット&ギャップなどは、16部署から集めた30人規模のワーキンググループで進めています。われわれが所属する情報企画課は17人おり、そこから数人が参加しています。ただ、ベンダーとの協議などは別の部署が担当しています。

 ──ガバメントクラウドのうち、どのクラウドサービスを使うかすでに決まっていますか

蛭田 まだ決定していません。ただ、私たちではなく(パッケージを開発する)ベンダー側の人材や技術資格の都合で、どうしてもAWSの影響力が強い。私たちに選択の余地があるのか、という気もします。

 ──システム標準化にかかる予算を教えてください

蛭田 変動する可能性もありますが、概算で約7億8000万円が20業務の移行費用になります。補助金の上限は中核市市長会が緊急要望を出した時点(補正予算での積み増し前)では2億7000万円で、当初は足りない想定でした。積み増しの影響は今後見えてくる予定ですが、具体的にどう反映されるかはまだこれからです。とはいえ、以前よりは状況が良くなると思っています。

 ──政府はシステム標準化とガバメントクラウドへの移行により、2018年度比で運用経費3割削減を見込んでいるとしています。福島市から見て、この指標は実現可能なものでしょうか

蛭田 料金はシステム同士をどう接続してどのデータを流すかによって変わりますが、そこも詳細を検討中で、試算もできていないのが正直なところです。先行自治体の中には詳細な金額を出しているところもありますが、われわれはそこまでたどり着いていません。そもそも政府の指す「3割」も、具体的に何の費用を指すものなのか不明瞭で、計測ができません。

 ──システム標準化によって現場の負担は増えていますか

蛭田 外部のデータセンターやプライベートクラウドでシステムを運用していた経験はあるものの、AWSなどパブリッククラウドをここまで本格的に使うのは初めてなので、用語やメカニズムなどを勉強しなくてはいけない状況です。

 私も東海林も一般の事務職員なので、テキストやウェビナーで勉強しています。正直、好きじゃないときついと思います。また、パッケージに合わせて業務フローや組織を見直すに当たって、複数の課で研修なども進めています。

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