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ムダなSaaSを“お片付け” 勃興するSaaS管理ビジネスの可能性 祖業を生かすマネフォ流の戦略はSaaS for SaaSの世界(1/4 ページ)

» 2023年11月27日 10時21分 公開
[武内俊介ITmedia]

 SaaS(サース、「Software as a Service」の略)がビジネスの現場でも当たり前に使われるようになり、コロナ禍の強制リモートワークもその普及を後押しした。高価で取り扱いの難しかったビジネス向けのソフトウェアが、安価で高度な機能が使え、ほぼ自動的に最新版にアップデートされるSaaSに置き換わっていくのは当然の成り行きである。

 では、SaaSが普及したことによって情報システム部門(以下、「情シス」)の仕事が楽になったのかといえば、実は全くの逆である。まず、SaaSの普及とともに「シャドーIT」と呼ばれる新たな課題への対応が必要になった。シャドーITとは情シスなどが関知せず、ユーザー部門が独自に導入したIT機器やSaaSなどのことである。

 また、近年はオンライン会議システムの「Zoom」やオンラインホワイトボードの「Miro」など狭い領域で高度な機能の提供するSaaSも増え、1社あたりのSaaS利用数は増加傾向にある。アメリカでは1社あたり80個前後、日本でも10個前後のSaaSが導入されているといわれており、日本企業が利用するSaaSは今後も増えることが見込まれている。

 情シスはこの増え続けるSaaSを適切に管理する必要があるが、表計算ソフトで作った管理表ではその対応は難しく、スタッフの入退社時などのアカウント発行・停止にも煩雑な対応を強いられていた。

 そこで必要になってくるのが、SaaS管理ツールである。情シスの仕事に関わりがない人にとっては、ほとんどお目にかかることがないマニアックな領域であるが、日本においてもSaaSの利用の急増によって一気に注目された分野だ。

 これから3回にわたって、SaaS管理ツールをひとつずつ取り上げていく。なお、3つのツールの優劣を明らかにすることは本稿の目的にはしておらず、この新しい課題にどのような思想をもって取り組んでいるのか、そしてどのような未来を実現したいのか、という部分にフォーカスしていく。

 SaaSは、導入後も頻繁にアップデートが行われて新機能が追加されたり、使いにくかったところが改善されたりして、ずっと進化し続けていく。比較検討する際には現時点での機能や価格だけでなく、どのような思想をもって作られたプロダクトなのか、解決したい本質的な課題は何か──などを理解する必要がある。本稿がSaaS管理ツールを選ぶ際の参考になれば幸いである。

 最初に取り上げるのは、マネーフォワードグループの「マネーフォワード Admina」だ。

執筆者 武内俊介 株式会社BYARD代表取締役、税理士

 

金融の企画部門、会計事務所、ベンチャーの管理部門を経て、税理士・業務設計士として独立。複数社への業務の再構築とITツールの導入支援を提供した後、株式会社BYARDを創業し、業務設計プラットフォーム・BYARDを開発・提供している。


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