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ムダなSaaSを“お片付け” 勃興するSaaS管理ビジネスの可能性 祖業を生かすマネフォ流の戦略はSaaS for SaaSの世界(4/4 ページ)

» 2023年11月27日 10時21分 公開
[武内俊介ITmedia]
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今後の競争はどう戦う 新機能や営業の戦略は

 リリースから2年が経過し、Adminaは次々と新しいサービスの提供を始めている。

 例えば、23年7月に開始したベンダー管理サービス「Admina Vendorプラン」では、サービス利用料と削減できなかったコストの差額を返金する「コスト削減返金保証」を実施している。各事業部門が使用したいSaaSを導入できる状態を維持しつつ、Adminaを通じてSaaSの購買フローを一元化することで10%以上のコスト削減を目指せるようにするものだ。中小企業には購買時のディスカウントについてのノウハウがなかったり、そこに割くリソースがない場合も多く、マネーフォワードiが持つそれらのノウハウを活用できる意義は大きい。

 さらには、23年9月からパソコンやスマホ、タブレットなどの社内のITデバイスを管理できる「デバイス管理機能」の提供を開始。23年11月には、人事が持つデータベースと連携し、情シスのSaaS・デバイス管理に適した従業員データベースが作成できる「Universal Directory」を発表した。

photophoto デバイス管理機能のイメージ(左)とUniversal Directoryのイメージ(右、いずれもプレスリリースから引用)

 情シスの管理対象は、SaaSアカウントだけでなく社内のITデバイスも当然に含まれる。人事が抱えるデータベースは社員・アルバイトの情報しか入っていないことがほとんどだが、業務委託者や外注先などに対してSaaSのアカウント付与やデバイスを貸与するケースも多く、情シスは独自のデータベースを構築しなければならない。

 一方で、人事データベースは住所や扶養などの個人情報が多く含まれており、人事部門以外からはアクセスできないため、これまで情シスは表計算ソフトなどで手作業で管理表を作成してきた。一連の管理機能をAdmina上に統合することで、デバイス管理台帳やSaaS管理台帳などが乱立して重複管理をする手間からも情シスが解放される──というコンセプトだ。

 Adminaのもう一つの強みは、マネーフォワードグループがMFクラウドなどを通じて既に有している中堅・中小企業企業の情報と営業ネットワークだ。MFクラウドが構築してきた税理士や社労士、地方銀行とのネットワークも存分に活用したセット販売も可能なわけだ。

 従業員数が1000人を超えるようなエンタープライズ企業においては管理やセキュリティの要件もかなり複雑になる。一方、数百人規模のいわゆるミッドマーケットにおいてはそこまでではないし、Adminaは必要十分な機能を備えている。営業面など泥臭い部分は、最終的に勝負を決める要因の一つになるかもしれない。

 「SaaS管理ツールは、実はリプレース(ツールの変更)がしやすいタイプのプロダクトであるため、ちゃんと運用に載せるためのカスタマーサクセスや、情シスの課題を総合的に解決できる機能などが重要になってくる」と今井社長。日本でも複数社がここ数年で一気に参入し、競争が激化しつつあるSaaS管理ツールのマーケットにおいて、Adminaが情シス向け業務OSに進化することができるのか、見物だ。

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