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ムダなSaaSを“お片付け” 勃興するSaaS管理ビジネスの可能性 祖業を生かすマネフォ流の戦略はSaaS for SaaSの世界(3/4 ページ)

» 2023年11月27日 10時21分 公開
[武内俊介ITmedia]

IDaaSとの棲み分けは? Adminaの場合

 SaaS管理ツールは、何に主眼を置くかで2つのタイプに分けることができる。

 1つ目は、SaaSとアカウントの管理に主眼を置くタイプで、誰が何のSaaSを利用しているかについての適切な把握と処理を可能とするものだ。情シスの作成するSaaS管理台帳の役割を果たし、入退社時のアカウントの一括作成・削除のみならず、ログイン状況、権限等の管理、利用料金まで一元管理することができる。

 2つ目は、SaaSに対する認証管理に主眼を置くタイプだ。アカウント管理の効率化のみならず、SaaS管理ツールを経由したシングルサインオン(SSO)や二要素認証を実現できる。もしIDやパスワードが外部に流出したとしても簡単に利用されないようにすることができ、セキュリティ面の強化のために導入するものである。

 前者はSaaS Management Platform、後者はIDaaSと呼ばれる。Adminaは前者であり、この分野の草分け的な存在である米Oktaは後者である。Oktaが創業した2008年ごろはクラウドやSaaSが企業に浸透し始めた時期であり、企業が「利用するSaaSのIDをいかに管理するか」という新たな課題に対応するためにIDaaSが考案され、エンタープライズ企業を中心に一気に広がった。

 IDaaSは社内ツールとしてSaaSを利用する際、関所としての役割を果たしている。各SaaSの利用状況を確認したり、セキュリティ上のリスクがないようにすることは情シスの重要な仕事の一つだ。IDaaSという関所を設けることでその管理は容易になり、従業員側も「これ1つあれば、多くのシステムに簡単にログインできる」仕組みが実現できる。近年のゼロトラストセキュリティ(社内外のネットワークをすべて信用しないことを前提にして、セキュリティレベルを向上させる概念)とも非常に相性が良く、ID管理・権限管理を一箇所に統合することのメリットは多い。

 一方で、コスト面や運用面でのハードルは比較的高いため、中小企業では簡単に手を出すことが難しいという側面もある。それに対して、SaaS Management Platform(SaaS管理ツール)は、SaaSの管理台帳を作成し、情シスがそれをもとに社内のSaaSの利用状況(ID数、利用状況、利用料金など)を管理しやすくするもので、特別な知識やスキルがなくても導入が可能だ。月額数万円から利用できるものがほとんどであり、中小企業でも導入がしやすい。

 コロナ禍を経て、日本でも各企業で利用しているSaaSの数は一気に増えており、セキュリティやコストの観点でもこれらを適切に管理する必要性は高まりつつあるが、「社内で使っているSaaSの数を、誰も正確に把握していない企業が多い」と今井社長は話す。

 Adminaでは、社内で利用するSaaSをしっかりと可視化するという部分に力を入れており、約250のツールが簡単に連携・管理できるようになっているという。中小企業では情シスの専任担当者を置くことが難しい企業も多いが、簡単に管理台帳を作成し、利用状況や利用料金を一元管理できるツールを導入することで、負担なく対応することができる。

 50ID以下は無料と、規模が小さな企業でも導入しやすい設定も特徴だ。SaaS管理ツールの導入メリットは「利用料などのコストの管理」「セキュリティの強化」「アカウント発行などの業務の効率化」などが挙げられる。さらに、規模が小さいうちからSaaSの利用状況をしっかりと可視化しておくことで、アカウントの発行や停止も効率的に行える上に、社内のツール利用状況が透明化され適切なコスト管理が可能になる。

 このあたりの感覚は、家計簿と非常に近い。複数の銀行口座やクレジットカード、ポイントカードを持っている人は多いと思うが、数が増えるほどに利用状況や残高をきちんと把握することは難しくなる。それらが家計簿管理アプリに統合され、自動的に残高や利用明細などが吸い上げられることによって、頻繁に目に触れるようになり、管理するための土台が整う。経費の見直しや貯蓄額を増やすかどうかなどの検討をするためには、まずは可視化がきちんとできていなければ話にならないのである。

 SaaSの特性として、まずは数人で月額1万円未満で使い始めることができるものも多いため、中小企業では気付かないうちに社内で使うツールが増えてしまう事態もよく発生する。SaaS管理ツールを導入する理由としては、きちんと管理台帳を整備することによるコスト管理の最適化を上げる企業が多いだろう。セキュリティの強化や情シスの業務効率化も重要だが、まずは自社のSaaS管理の状態を可視化するべし、というメッセージが「SaaSの会計簿管理サービス」という言葉から感じ取れる。

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