突然だが、まずはこの画像を見てほしい。ぱっと見、どこかのテーマパークや遊興施設のように思うかもしれない。しかし、画像はどれもIT企業のオフィスの写真だ。
IT企業の名はユーソナー(東京都新宿区)。法人企業データベースを手掛ける会社だ。IT企業といえば、コロナ禍以降はテレワーク・ハイブリッドワークが中心になっているところも多く、オフィスを縮小した企業も珍しくない。ユーソナーのように、目に見えないサービスを扱っている会社ならなおさらだ。にもかかわらず、同社はコロナ禍以前に整備したこのオフィス環境を維持し続け、あまつさえ拡張までしている。
同社がそこまでユニークな仕事場にこだわる理由とは何か。実際にオフィスにお邪魔して話を聞いたので、フォトレポートと共に紹介する。
ユーソナーのオフィスは京王新線初台駅からすぐ、東京オペラシティ15階にある。内装は画像を見てもらった通り、“事務所”的なイメージからはかけ離れている。IT企業らしい部屋は役員用の会議室など一握り。それ以外は全て映画やリゾート地などをテーマにした空間だ。もちろん勤務スペースも同様なので、社員は「恐竜のいるスペース」や「古代風のスぺ―ス」でまじめに業務や会議をしていた。
ユーソナーがユニークなオフィスに力を入れる理由、それは「顧客になるべくオフィスにきてもらう」ためだ。同社が手掛けるような営業活動用の法人データベースや、それに関するソフトウェアは、導入の検討に年単位の時間がかかる。となると、顧客と直接話す機会など、密な営業活動の重要度はより高まる。
仮にユーソナーの商品が機械やモノなら「ちょっと実物を見に来て」と伝え、工場や自社に来てもらい、ついでに商談を進めるような営業の進め方もあるだろう。しかし、目に見えない商品だとそうはいかない。そこで、オフィスの内装を凝ることで「なんだこのオフィス!?」と興味を持ってもらい、自社に足を運んでもらうための足掛かりにしているという。
「会社でWeb会議をするときにも、バーチャル背景は使わない。そうすると『その背景ってバーチャル背景ですか?』『いえいえ、オフィスなんですよ』と会話が生まれ『次回はせっかくなので来社していただいて……』とコミュニケーションできる」と同社の薗貴司執行役員。つまり、特徴的なオフィスは同社にとって営業のフックになっているわけだ。
そのため、コロナ禍があってもオフィスは縮小せず、むしろ拡大している。もともとは2013年に改装を始めたが、コロナ禍で同フロアの企業が出ていったこともあり、スペースをさらに広げたという。
「扱っているものがデータベースで、機密性があるので、あまりリモートワークができる状態でもなかった。であれば、在宅勤務よりは、人と人との距離を保てるようオフィスを広くする形が良いと考えた」(薗執行役員)
ユニークなオフィスは、人材採用におけるアピールポイントにもなっている。「結果的にそうなった形だが、新卒や転職者に対して押し出せるコンテンツになっている。特に前職のオフィスと比較できる中途採用者には驚かれる」と薗執行役員。テレビや雑誌の取材が入ることもあり、広報活動の手札としても機能しているという。
オフィスは今後も適宜改装する予定だ。直近では商談ができるスペースを追加で確保する方針としている。テレワーク普及の影響でWeb商談が増え、移動時間の減少によって商談の総数が増えたことから、現在のままではスペースが足りないという。
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