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「責任あるAI」チームを再編した米Meta ビッグテックですら手探り、AI倫理に“最適解”はあるのか事例で学ぶAIガバナンス(1/3 ページ)

» 2023年12月05日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 米Metaは11月17日(現地時間)、同社内のレスポンシブルAI(Responsible AI、日本語では「責任あるAI」と訳される)チームの再編を発表した。

 レスポンシブルAIとは、AIの開発や運用、利用に当たり、それが倫理的に行われている状態を指す。またその実現に向けて企業が行動し、説明責任を果たすこと(例えば、関連する指針やガイドライン、ポリシー類の策定や、各種ガバナンス体制の構築・運用といった取り組み)を指す表現としても、この言葉が使われている。

 いま企業ではこうした取り組みを推進するため、レスポンシブルAIを担当するチームの設置や、担当部署の明確化を行うところが増えている。Metaもその1社で、レスポンシブルAIを実現するための施策を検討・推進するためのチームを設けていたのだが、その体制変更を発表したのである。

なぜMetaはAIチームを再編したのか

 この体制変更を、MetaがレスポンシブルAIチームを「解体」したと受け取る関係者も多かったが、実際は先ほど表現したように「再編」と言う方が近かった。レスポンシブルAIチームに所属していたメンバーの大部分は、同社の生成AIチームに移動。残りのメンバーは、社内でAIを開発・運用するためのシステムやツールに取り組むAIインフラ部門に移動すると発表した。

 この件を報じたロイターの記事によれば、Metaは今回の再編について、レスポンシブルAIを担当するスタッフを「中核製品や技術の開発に近づける」ことが目的であると説明しており「AIが引き起こす事件・事故の防止に引き続き取り組む」としている。

 実際にMetaは近年、生成AIへの取り組みを強化している。オープンソースの大規模言語モデル(LLM)であるLlamaやLlama2を手掛け、OpenAIのGPTシリーズと競争する姿勢を見せている他、コード生成に特化したLLM「Code Llama」、画像生成AI「Emu」、動画生成AI「Emu Video」など次々に新しいモデルを発表している。

 また、こうした生成AIモデルの各種サービスへの組み込みも積極的に行っており、そこにレスポンシブルAIを担当する人々を配置するという決定は、理にかなっているといえる。

 このMetaの決定に懐疑的な声も挙がった背景には、最近の米Microsoftの動きがあった。2023年の初めに、Microsoftの内部で、AIに関する原則を製品開発に反映させることを担当していた「倫理・社会チーム」を全員解雇したことが報じられたのである。

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