ITmedia NEWS > 社会とIT >

全然進まない「国民年金」のフルDX化 60歳を迎えた筆者が感じた制度設計の“気の利かなさ”小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年12月06日 17時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 国民年金(老齢基礎年金)は、日本国民なら20歳から支払い義務が生じ、以降40年間、60歳を迎えるまで支払い続けなければならない。正確には、59歳11カ月分まで支払うという事になる。昔であれば、年金の支払い期間が完了すると隙間なく受給がはじまったわけだが、現在は度重なる法改正により、厚生年金も基礎年金も原則65歳から受給が始まることになる。

老齢年金の受給年齢の変遷(日本年金機構 令和5年度版老齢年金ガイドより)

 60歳で義務終了というのは、定年年齢が60歳に設定されていることとリンクする。ただそこから年金の受給開始まで5年ある。繰り上げすれば60歳からでも受給できるが、支給額が減額されるので、65歳まで受け取らないという人は多い。そこで再雇用制度などを利用して、65歳までなんとか食べていけるようにするというのが今の社会の形である。

 では実際に年金の払い込みが終わるとき、どうなるかご存じだろうか。筆者は今年10月に60歳の誕生日を迎えたので、40年間の支払い義務がようやく完了したことになるわけだが、支払い義務完了を受けて何かの通知なり封書なりが来るのかと思っていた。

 だが実際には、単に毎月の納付書が誕生月以降「ない」というだけで、何の連絡も来ないのである。あるいはこれまでの納付額と受給できる予定の見込額みたいな資料も来ない。年金の繰り上げ受給もできますよ的な案内も来ない。なんかこう、40年も払い続けてこれまで国民年金制度にご理解いただきましてありがとうございました的な礼状1つ来ないというのも、冷たいよなぁというか、失礼な話だよなぁと思う。こういうところにこそマナー講師が必要なんじゃないのか。

 ご承知のように国民年金は、未来の自分の老後の積み立てではない。すでに老齢年金を受け取っている人の分を負担してきたのだ。自分が受け取る分は、今後自分より若い世代の人達が負担するという、玉突き事故みたいな設計である。それこそ「制度をご理解」していないと、バカバカしくてやってられない制度なのである。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.