2023年10月に新聞各紙が報じたところによれば、厚生労働省では国民年金の保険証を支払う期限について、現状の40年から5年延長し、64歳までの45年間にする方向で本格的な検討に入ったという。人口減少や少子化でも、年金の財源を確保するのが狙いだ。すでに年金部会は賛成委員で埋められ、24年中に改革案をまとめ、25年の通常国会での提出を目指している。
この背景には、「改正高年齢者雇用安定法」がある。すでに以前の改正で各企業は25年4月までに、「65歳までの雇用確保」が「義務付け」られているが、それにプラスして、さらに70歳までの雇用確保を「努力義務」とした。
つまり25年までには多くの人は65歳まで働くことが確定するので、年金もそれまで払っていただきましょう、という理屈である。これが実現すれば、64歳(64歳11カ月)まで年金を支払って、65歳からギャップレスで年金受給者になるという、昔の形に戻るわけである。
とはいえ、現時点で定年を65歳に延長したり、定年制を廃止した企業は少ない。多くは再雇用制度を導入し、60歳で役職をはがして減収としたのち同じような仕事をさせるという道を選んでいる。それがイヤで転職の道を選ぶ人も多いが、現役時代と同じ年収が確保できる見込みはほぼなく、どうしても減収は受け入れなければならない。
一方国民年金保険料の月額は免除申請しない限りは固定なので、減収に対して年金保険料の負担感は大きくなる。現在58歳もしくは施行まで1年あるとして57歳以下の方は、60歳からも減収しないという社会制度にならない限り、そこから5年間の年金負担はかなり苦しいだろう。
年金の支払期間5年延長は、次回総選挙の大きな争点となり得る。反対の理由は明らかで、60歳以上でも減収しない社会の実現の方が先に来るべきである。ただその先にある年金制度が、想像以上に気が利かないポンコツというところがまた実に頭の痛いところだ。支払期間延長があるなら、年金制度の完全DX化と引き換えじゃないと、国民は全く割に合わないことになる。
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