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給食費無料の“条件”にする自治体も──マイナンバーカード、インセンティブの考え方が間違ってない?小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2023年01月27日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 マイナンバー制度は、「社会保障や税制度の効率性を高め、国民に利便性の高い行政サービスを提供するための社会基盤」と説明されることが多い。政府は普及になりふり構わぬ手段を使ってきたが、2022年12月には普及のために費やした事業総額が合計で2兆円超に上ることがわかった。ほとんどはマイナンバーカードを作るともらえる「マイナポイント」関連費用である。

 こうした、お金のインセンティブを付けてまで普及を目指したわけだが、総務省の調査によれば、22年末時点での全国普及率は57.1%。そんなマイナポイントの取得期間も、23年2月28日で期限を迎える。これ以降は特にインセンティブもないまま、2024年秋に健康保険証を統合、半ば強制的に持たされる事になる。

 マイナンバーカード、というかマイナンバー制度には、不信感を持つ人も多い。そもそもの発端が、2007年に発覚した5000万件もの年金記録不明事件、いわゆる「消えた年金」が引き金となって導入が進められた制度ということもある。当時年金は、社会保険庁(現在は解体)が管理しており、いわゆる「役人の適当仕事」のツケを国民が払う格好になるのが気に入らないという人も少なくないだろう。

 もう1つは、マイナンバーカードを持つ事で「国民にいいことがある気がしない」こともある。税の公平負担は大事なポイントではあるが、個人の所得が国に筒抜けになる。そもそも「役人の適当仕事」が根絶された保証はないわけで、そんな連中に人生握られて大丈夫なのかという不愉快さが払拭できない人も多いだろう。

 個人的には現在の57.1%は、まあまあいい数字じゃないかと思っている。確定申告をはじめ、所得に関する手続きにはだいたいマイナンバーが必要だし、もう持つべき大人はみんな持ちました的な数字のように見える。あとは子供や、現在入院療養中の後期高齢者に至るまで持たせないと、これ以上は上がらないんじゃないかという気がする。

 ちなみに制度制定以降、子供にもすでに番号は振られていて、「通知カード」で知らされてくる。要するに写真とICチップのついたプラスチックカードを持て、という話なのである。

 ただ、今さらクレジットカード大の物理カードを持てというのもセンスのない話である。まあパスポートや年金手帳のような紙の手帳を持てと言うよりは筋はいいかもしれないが、多くのものがスマホアプリ化する中、時代遅れ感は否めないところだ。

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