ある意味ほっといても2024年秋にはだいたいの人が持つようになるわけだが、地方によってはそれを待たず、次第に強引な手法で普及に舵を切るところも出てきた。
岡山県備前市では、22年度から給食費や学用品費の一部を無償化したが、23年度からは「児童・生徒およびその世帯員の全員がマイナンバーカードを取得している場合」という条件を付けた。保育園の保育料や農業漁業の資材価格高騰のための補助金も同様だという。東京新聞が報じた。
本来なら無条件で受けられた支援も、カードを持っていないというだけで剥ぎ取られる。「公平」が大原則の教育や行政サービスに対して、たかだかカードの有無で差別されるのは、問題が大きい。人権問題にもなり得る施策だが、関連中央省庁はその是非について明言を避けている。
今さら地方自治体がマイナンバーカードの普及に血眼になるのは、財務相と総務相が22年12月の閣僚折衝で、カード交付率を地方交付税の算定に反映させることで合意したからである。地方交付税とは、地方税の歳入の均等化を図るため、所得税や酒税など国が集める税金のうちから、地方自治体へ再配分する仕組みだ。つまりカード交付率が高ければ、国からもらえる地方交付税が増すというわけである。
「交付率が上がるほど、自治体のデジタル関連サービスを提供する経費が増えるはず」という理屈だが、そもそも経費削減のためにデジタル化しているわけであって、こんなのは「そういうことにできる」という後付けの理屈だ。実際には「普及させたご褒美」である。
カネ、カネ、カネ。こうした算定方法からすでに公平性が欠落しており、それが地方行政にも反映され、地域住民が泣かされるという図式である。
岡山県のサイトを見ると、カード交付状況は備前市が高梁市を小差で破って1位。どうしても1位を死守したいのだろうか。
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