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給食費無料の“条件”にする自治体も──マイナンバーカード、インセンティブの考え方が間違ってない?小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2023年01月27日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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「納得できるインセンティブ」とは何か

 総務省の資料によれば、都道府県別のカード交付で第1位は、筆者の住む宮崎県の71.6%である。また特別区・市レベルで全国トップなのも宮崎県都城市で、交付率88.7%となっている。

都道府県別で、宮崎県が1位
交付日本一は宮崎県都城市

 一体どんな手を使って…と都城市のサイトを見てみると、そのインセンティブが非常に的を射ているのが分かる。例えば「電子母子手帳」はマイナンバーカードを使って登録すると、市から子育て情報が届いたり、市で行なった検診や予防接種の記録が確認できる。「おくやみ窓口」は、亡くなった方と申請者のマイナンバーカードの情報を読み取って、関連する申請書をワンストップで作れるサービスだ。「デジタルケア避難所」は、避難所への入所時に、手書きの書類提出なしで入所できる。

 その他、市立図書館の本がカードで借りられたり、ふるさと納税が一発で申請できたりと、カネの問題ではなく、ちゃんと利用価値があるインセンティブを提供している。「持っていた方がトク」という方向へ、行政が知恵を絞ってきたのが分かる。

「中核市」では宮崎市がトップ

 筆者の住む宮崎市は、「中核市」というくくりではトップの、72.0%である。ここまでの数字は、「子供」を巻き込まないと達成できない。宮崎県では、私立高等学校等奨学給付金を受給するための申請には、保護者と生徒のマイナンバーカードが必要になることから、受験を控えた中学生のうちにマイナンバーカードを申請する例が多い。かく言う筆者の子供たちも、その関係ですでに全員マイナンバーカードを作っている。

 とはいえ、だ。結局はマイナンバーカードの裏表のコピーを取って書類に添付という方法では、全くデジタル化の恩恵は受けていない。宮崎県だけでなく、いまだ政府や自治体からなんらかの支払いを受ける際には、マイナンバーカードのコピーを送れという事態になる。100%の普及を目指すという鼻息は結構だが、われわれ国民は絶対にこんなことをゴールとして、納得してはいけない。

 現在地方行政もDX化がスタートし、今後多くの手続きがデジタル化されるはずである。利用するにはマイナンバーカードが必須、と追い込みをかけるよりも、あった方が便利、のほうがインセンティブが働く。マイナンバーカード普及にバラツキがあるのは、自治体が市民の幸福のためにどれぐらい頭を使ったかの差ではないのか。給食費を人質にとるのはやっぱり違うよな、と思う。

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